三頭の虎はひとつの山に棲めない
日中韓、英国人が旅して考えた

著:マイケル・ブース 訳:永峯 涼/KADOKAWA

column

2020.11.05

中国に「ひとつの山に二頭の虎は棲めない」という古いことわざがあります。この本のタイトルはそこからとったといますが、ここでの三頭の虎とは日本、中国、韓国のことです。

著者のマイケル・ブースは、家族で日本各地を食べ歩いた「英国一家、日本を食べる」という本を以前出版しています。この本は話題を呼びアニメ化されてTV放映されたのでご存じの方も多いと思います。しかし今度の本は日中韓三国の食べ歩きではありません。著者はイギリス人ですが、当事者ではない第三者の眼で見た現在の三つの国と台湾のレポートです。

著者はこれらの国々が、互いに友好関係を築ければ、いいことずくめなのに、「これらの国々は常に、深刻な紛争に発展しうる一触即発の状態にある。もし第三次世界大戦が起こるとしたら、この地域から生じる可能性が高いと考える人は多い。」とまで言います。この地域に蔓延する憎しみが、本当に大衆の感情から生まれているのか、あるいは単なる家庭内不和みたいなものなのか、それを確かめに1853年にペリーがはじめて上陸した横須賀の久里浜から出発します。福岡まで日本を車で縦断、フェリーに乗って釜山に渡り、光州を通って北朝鮮の国境まで回り、仁川からまたフェリーで中国の青島へ向かい、北京からハルビンに列車で行き、その後沿岸部を中心に香港まで下ります。香港から台湾へ飛び、再び日本へ戻ってきます。

もちろんこれは観光地を巡る旅ではなく、歴史の暗部にも踏み込みます。日本では中華街やコリアンタウンを訪れ、韓国や中国では日本軍の戦跡が残る場所を回ります。

山下 郁夫

宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

坂出市出身。約40年書籍の販売に携わってきた、
宮脇書店グループの中で誰よりも本を知るカリスマ店長が
珠玉の一冊をご紹介します。
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宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

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