韓国の変化 日本の選択 -外交官が見た日韓のズレ

著:道上 尚史/筑摩書房

column

2022.09.01

韓国は、高松からソウルまで飛行機だと2時間足らずで行くことができます。コロナ下で運休しているとはいえ最も近い隣国です。近いからこそ上手く行かないということが、世界を見渡しても、ロシアとウクライナをはじめ珍しくありません。この本の著者は外務省きっての韓国通で、私たちの知らない韓国の実情や、人々の日本観を長い韓国勤務の目を通して紹介してくれます。

1990年代以降韓国は恐るべきスピードで変化と進化を遂げています。韓国内でも、それまでを旧時代、それ以降を新時代という区分があるそうです。今や日本は賃金で韓国に抜かれ、一人当たりのGDPも肩を並べられています。サムスン電子にも日本のメーカーは水をあけられています。経済の分野以外にも、KポップのBTSが世界を席巻していますし、韓国映画がアカデミー賞をアジア勢で初めて受賞しました。サッカーのプレミアリーグでもソン・フンミンが得点王を取りました。そんな韓国の変化に日本はまだ直視出来ずにいるような気がします。著者は日本人には日本は特別という意識がやや独特で強いと指摘します。

もちろん韓国もそんないい話ばかりではなくて、そこには大きな問題が横たわっていると言います。日本以上の学歴社会、それに伴う激烈な競争社会、世界最低水準の出生率。やみくもに突き進む社会には大きな弊害もついて回ります。テレビでそんなことが放送されるたびに、日本人にはここまで徹底できないなと思います。著者が言うように20世紀型国家として成功した日本は、21世紀型国家システムへの脱皮が遅れているのかも知れませんし、世界の潮流に背を向けず彼我をよく見ることが必要だとも思います。

日韓の関係は最低の状態から少しは脱したとはいえ、ぎくしゃくした状態が続いています。とはいえ古来日本の発展に大きな役割があったことは間違いありません。軽く流すことは出来ませんし、そしてしんどいプロセスも覚悟せよと著者は最後に言います。

山下 郁夫

宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

坂出市出身。約40年書籍の販売に携わってきた、
宮脇書店グループの中で誰よりも本を知るカリスマ店長が
珠玉の一冊をご紹介します。
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宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

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