玄米の新たな食べ方を提案

まるざ発芽玄米研究所 山川 瑞穂さん

Interview

2017.03.02

玄米食を広める活動をしていた母の恩師が最期に、母の手を握りながら「玄米の力を未来の子どもたちに伝えて」と言った。その言葉に衝撃を受けた。「そこまで思う『玄米』って何なんだろうって興味が湧いて」。そこから、山川瑞穂さん(42)の玄米商品開発が始まる。
10年前は、県外で洋服の製図を引くパタンナーをしていた。時には夜中までかかるハードな仕事、いきおい食事はレンジで温めるものやお湯を入れて食べるインスタント食品が多くなった。そんな山川さんに、母親は玄米食を勧めたという。「当時は、なんでそこまで言うんだろう、としか思っていませんでした」。しかし、結婚・出産を経てふと立ち止まる。今まで自分が食べてきたものを子どもに食べさせられるだろうか。

とことんまで突き詰める性格もあり、玄米について夢中で勉強を始めた。店頭に並ぶ玄米の値段が商品によって違うのはなぜ?と疑問に思ったことから調べていった。農学部の先生、生産者、食の専門家など、つてを頼って時には東京にも勉強に行き相手を質問攻めにした。

やがて、発芽させた玄米の方が栄養価が高い、ぬかや胚芽を丸ごと食べる玄米は無農薬栽培にすべき、という考えに至る。「実際、食べ始めて自分の体調も変わってきて。食べ物が体を作っているんだなあと実感しました」
いいものだと確信が持てたから多くの人に伝えたい。しかし、そこには課題もあった。「私自身“簡単・便利”が染みついていたので毎日家庭で玄米を発芽させるなんて面倒」。仕事や子育てに忙しい現代人にずっと続けてもらうにはどうすべきか、やっぱり手軽なパンのようにはいかないのか―。

そこで、発芽させた玄米を「お餅」にした商品を思い付く。試行錯誤の中で家庭用餅つき機が6台壊れ、今度は業務用杵つき機を使い「まるざ古代餅」が完成した。トースターで5分焼くだけ、プチプチした食感を残す程度に玄米をつぶしているのでよくかめない子どもも消化しやすい。何よりおいしいことにこだわった。

材料の玄米は、農薬、化学肥料、除草剤を使わず栽培したものを使う。思いを共有できる生産者に何度も手紙を出してお願いした。炎天下の除草なども一緒に行い、チームとして信頼関係を築いていく。「土づくりから見せてもらいます。現地にすぐ行けるよう、今契約している17カ所はすべて香川・徳島の生産者です」
まるざのロゴ。「ざ」の濁点は米粒を表している

まるざのロゴ。「ざ」の濁点は米粒を表している

「○」と「ざ」を使った「まるざ」のロゴ。「さ」の右上にある濁点は、○の外に飛び出している。「讃岐の国から世界に飛び出して玄米のよさを伝えたいという意味を込めました」。実際「古代餅」が知られるきっかけは、ニューヨークにある有名日本料理店の料理長に認められたことだった。「完成したばかりの古代餅とフライパンを持って7年前に海を渡りました。自然の力を信じて作っているので、このこだわりは伝わる!と変な自信があったんです」
カフェで提供するランチ

カフェで提供するランチ

昨年は古代餅の食べ方を知ってもらおうと、高松市牟礼町にカフェをオープンし、レシピを紹介した本も出版した。次の目標は、玄米の発芽室などを備えた新工場の建設だ。「若いころは自分中心で、自分にばかり投資してきました。これからは何かお返しできれば」。未来の子どもたちのために、体にいいものが手軽に食べられる環境を作る。トレードマークの“白衣”で今日も研究に邁進(まいしん)する。

編集長補佐 石川 恭子

山川 瑞穂 | やまかわ みずほ

1974年 8月 高松市生まれ
2010年 1月 「まるざ古代餅」商品開発
2010年12月 株式会社デュエット設立
2015年11月 まるざ発芽玄米研究所オープン
写真
山川 瑞穂 | やまかわ みずほ

まるざ発芽玄米研究所 株式会社デュエット

住所
高松市牟礼町牟礼2310
TEL:087-845-5200
事業の概要
自然栽培で作る玄米
古代米関連製品の開発・製造・販売
資本金
300万円
社員数
6人
地図
URL
http://www.maruza.net/
確認日
2018.01.04

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ