博物図譜に見る讃岐の野菜~インゲンマメとササゲマメ~

野菜ソムリエ上級プロ 末原俊幸

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2021.08.05

香川県指定有形文化財「写生画帖 菜蔬 表13」 高松松平家歴史資料(香川県立ミュージアム保管)

香川県指定有形文化財「写生画帖 菜蔬 表13」
高松松平家歴史資料(香川県立ミュージアム保管)

豆類は、未熟な状態では野菜として利用でき、熟して乾燥したものは長期間保存できる乾物として活用できます。収穫期についても、春のエンドウマメやソラマメから、秋の大豆や小豆まで、春から秋にかけて季節を変えて様々な豆が収穫できることから、食料として重宝されてきました。

18世紀に編纂された『高松松平家博物図譜 写生画帖~菜蔬』には、大豆(表27)、小豆(裏14)、ソラマメ(表30)など現代でもなじみの深いものから、ケイトウマメ(表30)、ナタマメ(表12)など現代の香川県では一般的に栽培されていないものまで、バリエーションに富んだ豆が描かれており、当時の食生活においても、豆類がいかに貴重なものであったのかが推察できます。
インゲンマメ(左)とササゲマメ(右)

インゲンマメ(左)とササゲマメ(右)

さて、ちょうど今の季節、店頭をにぎわす「インゲンマメ」ですが、日本への渡来については、「承応3年(1654)に隠元禅師が中国(明)から持参したとされるが、詳細は明らかでない」、「それはインゲンマメではなく、フジマメとされている」という説が一般的となっています。

実際に、『写生画帖~菜蔬』には「フジマメ」(表12)の姿が確認することができます。また、インゲンマメという名称ではありませんが、よく似た形態の「紅豆」(付札なし、裏2)も描かれています。ただ、「紅豆」の説明には「野菜としての利用には向かない」と思われる記述があるため、現代のインゲンマメとは異なる豆なのかもしれません。
一方、当時、夏場に野菜として利用されていた豆は、夏の暑さにも強い「ササゲマメ」(上図)であり、豆の色も、白、赤、紫そして赤斑と品種も豊富であるという表現からも、当時はとてもポピュラーな豆であったことがうかがえます。

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん

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