「讃岐の食文化」の素朴な疑問③

野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸

column

2022.06.02

香川県に来て初めて麦畑を見ました!

香川県における令和3年の麦類栽培面積は3,129ヘクタールで、全耕地面積29,300ヘクタールの約1割にあたります(令和3年農林水産省作物統計)。県内でも、栽培が盛んな丸亀市や善通寺市、琴平町などの中讃エリアでは、約2割の農地で麦が栽培されています。暦の上で「麦秋至(むぎのときいたる)」※を迎える本紙の発行日ごろには、讃岐平野のあちこちで、麦が茶色く色づき、あたかも秋が来たかのような風景を作り出します。

※麦秋至:季節を表す言葉七十二候で5月31日頃を表す。

さて、香川県は人口密度が高く、耕地面積も少ないので、昔から食糧不足に悩まされてきました。このため、可能な限り米を作付けしながらも、米に代わって胃袋を満たせる様々な食材を作付けしてきました。この食文化を代表する食材が「麦」であり、讃岐の秋の麦の特徴は、出荷するためのものではなく、食べるためのものでした。

統計をさかのぼると、昭和9年では米の作付面積37,430ヘクタールに対して、麦の作付面積はその約9割である34,502ヘクタールと、ものすごい面積の麦が栽培されていたことがわかります。

また、現在、香川県で作付けされている小麦は、うどん用小麦「さぬきの夢2009」であり、まさに、自県に向けての商品であることがわかります。

長年培われた農業生産や食生活は、現代でも、麺類、小麦類、パン類などの小麦製品の消費の多さや、米の消費の少なさとして統計に如実に表れています(総務省統計局家計調査)。また、香川県では、うどん屋の店舗数が多いのはもちろんなのですが、食パンなどのパン屋が受け入れられやすいのも、麦食文化が浸透している現れなのでしょうね。

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん

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