博物図譜に見る讃岐の野菜~マンバ~

野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸

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2022.02.03

香川県指定有形文化財「写生画帖 菜蔬 表2 」(部分) 高松松平家歴史資料(香川県立ミュージアム保管)

香川県指定有形文化財「写生画帖 菜蔬 表2 」(部分)
高松松平家歴史資料(香川県立ミュージアム保管)

マンバ(ヒャッカ)はどこに?

香川県の郷土野菜の代表に「マンバ(西讃では「ヒャッカ」)」があります。県外の方にはなじみが無いのですが、マンバを湯がいて、豆腐や油揚げなどと炒め煮する「まんばのけんちゃん(西讃では「おせっか」)」は、讃岐の冬に無くてはならない定番料理です。

マンバは、香川県の方言で、一般的な名称は高菜で、香川県では、10月から4月の約半年間、日常的な青菜として利用されています。

マンバが、いつの時代から青菜として利用されてきたのかは明らかになっておりませんが、多くの香川県の方言と同様、香川県の東のエリアでは「マンバ」と、また西野エリアでは「ヒャッカ」と異なることから、江戸時代中期以降、香川県が、高松松平藩と丸亀京極藩に別れていた頃の名残であるとも言われます。また、坂出市の渡辺家の文書に、安政4(1868)年の法事の汁として「万葉の赤味噌汁」が供されていたことから、少なくとも、江戸時代には野菜として利用されていたことが確認されます。

しかし、香川県で古くから冬場のメインの野菜として活躍してきた「マンバ」の、高松松平家博物図譜での描写ですが、類する野菜としては、「火焔菜」「さんごじゅな」(表2)ですが、これは名称からアカザ科のビーツの仲間で、描写も、葉脈が赤く、葉脈が薄い緑のマンバとは全く形態が異なっています。
香川県指定有形文化財「写生画帖 菜蔬 裏7」 高松松平家歴史資料(香川県立ミュージアム保管)

香川県指定有形文化財「写生画帖 菜蔬 裏7」
高松松平家歴史資料(香川県立ミュージアム保管)

また、「蕓薹盖此」「はせおな」(裏7)は、マンバに比べると葉の中肋(葉の中心の分厚くなった部分)が細く、葉先もとがっている、説明文として「採油用」とされていることから、別の野菜であると考えられます。
私達、香川県民になじみの深いマンバが、いつから香川県で利用されているのかについては、謎が深まるばかりです。

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん

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