香川県は冬も温暖なことから、秋に植え付けて12月に収穫、その後1月に植え付けて6月に収穫。1年で2度収穫できることから「ニドイモ」と呼ばれてきました。
小豆島では「きんかんいも」という名称で、畑地を利用して作付けされ、現在も小豆島産のジャガイモは12月になると、高松市中央卸売市場に姿を現します。
では江戸時代中期、ジャガイモはどのように認識されていたのでしょう。野菜を網羅した『写生画帖 菜蔬(さいそ)』をめくると、イモのうちサトイモは多数の品種が描かれており、当時「イモ」として主に食用にされていたのはサトイモであることが裏付けられます。
しかし、ジャガイモについてはその姿を見ることはできず、唯一、ジャガイモの花と思われる植物が描かれていますが(表16)、付札には何も記載されていません。墨書にも「此宗正名未詳」とあり、当時、正確な名前は明らかではなく、可食部であるイモ(正確には塊茎(かいけい)。地下にある茎が肥大化したもの)も認識されていなかったと推測できます。
一方、17世紀に日本にもたらされたとされるサツマイモ(表43 蕃薯:ばんしょ)については、既に「サツマイモ」としての名称が定着しており、かつ私たちにも馴染みのあるイモも描かれていることから、ジャガイモに先んじて、食料として活躍していたのでしょう。
ちなみに、ジャガイモと同じナス科の野菜として、17世紀に日本にもたらされ、今や私たちの食卓に欠かせない野菜であるトマトは「くささんご」として赤々とした果実が描かれているのですが、それは『写生画帖 菜蔬』ではなく『写生画帖 雑草』であり、18世紀中期では、未だ食用としての認識すらされていなかったことが想像できます。
野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん
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