博物図譜に見る讃岐の野菜~ダイコンの花~

野菜ソムリエ上級プロ 末原俊幸

column

2021.04.01

「高松松平家博物図譜 写生画帖 菜蔬」(高松松平家歴史資料)

「高松松平家博物図譜 写生画帖 菜蔬」(高松松平家歴史資料)

香川県の食文化は、マンバ(ヒャッカ)やセレベスなど、他の地域ではあまり見られない野菜が、市場流通をして定着していることが大きな特徴ですが、それら特徴的な野菜がいつごろから食べられ始めたのかは定かではありません。生産統計である『香川県統計書』(香川県)では主要な品目の栽培面積しか分かりませんし、香川県内に流通する青果物の統計である『市場年報』(高松市)は、高松市中央卸売市場が開場した昭和42年以前のデータは分かりません。
ダイコンの花

ダイコンの花

現在の香川県の食生活のルーツを探る手掛かりとして、江戸時代の『高松松平家博物図譜』があります。高松松平家5代藩主であった松平頼恭公の命により編纂された博物図譜には、当時の讃岐の人々が食べていたと考えられる野菜や果物が細部にわたるまで見事に描き残されています。そこで本年度1年間は、高松松平家博物図譜のうち「写生画帖~菜蔬」「衆芳画譜~花果」の2帖を読み解きながら、現代と約250年前の香川県の青果物を比較したいと思います。

さて、植物の特徴は、1年を通じて姿を変えることです。中でも「野菜」は、「子孫を残す」姿である熟した果実や種ではなくその成長過程を利用するため、模写をするタイミングで、その絵が何月ごろに描かれたのか類推することができます。

「写生画帖~菜蔬」には10種類のダイコンが描かれており、そのうち5種類については花が描かれています。ダイコンの花が咲くのはちょうど今頃の季節。高松松平藩の絵師たちは、光のどけき春の日に、ダイコンの花と向き合っていたのでしょうね。

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん

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