博物図譜に見る讃岐の野菜~江戸時代に食べられていたタケノコ~

野菜ソムリエ上級プロ 末原俊幸

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2021.05.07

香川県指定有形文化財「写生画帖 菜蔬 裏 41」高松松平家歴史資料(香川県立ミュージアム保管)

香川県指定有形文化財「写生画帖 菜蔬 裏 41」高松松平家歴史資料(香川県立ミュージアム保管)

市場に出回るタケノコは一般的には孟宗竹なのですが、それ以外に食用となるタケノコは、「淡竹(ハチク)」「真竹(マダケ)」などが存在します。4月にまず孟宗竹のタケノコが収穫され、続いて麦が色づき始める5月15日頃(季節を表す言葉七十二候では「竹笋生」)には淡竹が、そして6月末にかけて真竹が収穫されます。香川県では、孟宗竹以外に淡竹や真竹も市場に出荷され、市中に出回り、春から夏にかけて異なる味覚を楽しむことができます。
淡竹(ハチク)

淡竹(ハチク)

では、江戸時代の讃岐の人々が食べていたタケノコはどれなのでしょうか。私たちの感覚では4月に出荷のピークを迎える「孟宗竹」がイメージされます。しかし、『高松松平家博物図譜』のうち、野菜を網羅した『写生画帖 菜蔬』にも、7種類の竹が描かれている『写生画帖 雑木』にも、その姿を確認することはできません。孟宗竹が日本に入ったのは、元文年間(1736~41年)とも言われているのですが、博物図譜が編纂されたころには、まだまだ一般的ではなかったのでしょう。

実は、食用されていたと考えられるタケノコは『写生画帖 菜蔬』に1種類しか書かれていません。それが「淡竹」です。この淡竹は、えぐみも少なく、下茹をしなくても料理に使うことができます。煮物はもちろんのこと、しっぽくうどんの出汁に入れると、淡竹特有のほのかな甘みを楽しめます。淡竹が市中に出回るのはちょうどこれからの季節。新型コロナウイルスの影響で、家で料理をする機会が多いと思いますので、ぜひ「淡竹」を手に取っていただき、江戸時代の食生活に思いをはせていただければと思います。

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん

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