日本の構造  50の統計データで読む国のかたち

橘木 俊詔/講談社

column

2021.05.07

統計データを見たり読んだりするのは結構楽しいし面白いので、私はよく見ます。もっともデータには気をつけなければいけないこともよくあります。例えば世界の都市の人口をみてみると、中国の重慶市という都市の人口は3,124万人(2019年)となっており、あまりに多くてびっくりします。しかしこの場合、中国の「市」というのは、日本でいうところの県というイメージだということです。

この本は50の項目をピックアップして、日本の今の姿を、データを媒介にして読み解いていきます。企業と労働者の生産性、賃金や所得、定年制の実態、女性の労働の実態などの経済分野のデータから始まり、もともと家族の絆に頼ってきて、近年その絆が弱まり、福祉の提供が充分でなくなり、人々が日常の生活に困り果てている日本の福祉に関するデータ、「一億総中流社会」を誇っていた日本が、今や中間層が減少して、富裕層と貧困層の増加がめだってきた格差に関するデータ、格差はその他に地域間格差も問題になり、さらには教育格差、健康格差も取りざたされています。日本人の生活という項目もあり、変化する家族形態、G7の中でも最低だという幸福度の問題、未婚率や空き家率の問題など次から次へと気になる項目が出てきます。

これらに対する有効な処方箋はあるのでしょうか。もしここからの復活を図るのであれば、著者は「人々は必死に努力してガムシャラに働かざるをえない。豊かな生活をしたいという希望がその動機になるが、日本人の勤労意欲の低下がめだち、働くこと以外に価値を見つける人が増加している。いわば日本は成熟社会の顔を有しつつある」。そしてヨーロッパのように消費税率を20%に上げるより、福祉の恩恵を受ける人を好まない日本人は、アメリカ型の自分のことは自分で面倒をみるという自立型に向かう可能性が高いと言います。

山下 郁夫

宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

坂出市出身。約40年書籍の販売に携わってきた、
宮脇書店グループの中で誰よりも本を知るカリスマ店長が
珠玉の一冊をご紹介します。
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宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

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