背景に「担い手不足」がある
県では担い手不足解消のため、就農準備資金の交付や相談窓口設置、農地の借り手と貸し手のマッチング事業などの施策を行っている。「ブランド化」はその一つである。ブランド化することで、農作物(商品)の価値が上がれば収益につながる。香川だけのオリジナル品種を開発してブランド化することで、“儲かる農業”を推進し、就農者の増加につなげるという狙いがある。
柑橘類に代わる特産品で、差別化を目指せ !
温暖な気候の香川では従来、柑橘類の生産が盛んだったが、温州みかんの価格が低迷した時期に、代替品種の一つとしてキウイが導入された。その後、牛肉・オレンジの自由化により、さらなる経営悪化が予想される中、柑橘類に代わる主力品目の育成が急務となった。
そこで当時、海外の品種がメインだったキウイに着目し、香川にしかないオリジナル品種の開発が始まった。10年ほどの年月をかけてまず誕生したのが糖度の高い「香緑(こうりょく)」。京阪神や東京の百貨店、高級果実専門店で1個1,000円ほどの高級フルーツとして注目された。
現在、キウイの県オリジナル品種は10品種。健康志向、温暖化など嗜好や時代の変化に合わせて、それぞれの品種を少しずつ改良し続けている。
品種開発だけでブランド化は完成しない
「香緑」や「さぬきゴールド」は東京や京阪神の百貨店、高級果実専門店で販売し高付加価値を訴求。「さぬきキウイっこ®」は県内の学校給食で提供するなど、県内外で認知度アップを進めてきた。また、香川県ではキウイをはじめ県オリジナル品種を中心とした果実で、認定生産者が栽培し、糖度など一定の品質基準を満たしたものを「さぬき讃フルーツ」として推奨している。対象品目にはロゴマークを付けて販売。香川の高品質な果物をPRするとともに、ブランドとしての品質安定化、信頼獲得にも努めている。
大阪から就農した深井稔さんは、同級生の山田唯可さんとともに香川のキウイ農家に弟子入り。3年の研修を経て現在は、JAに出荷するほか自分たちの屋号「深山キウイ」として、ネットなどでなどで販売している。
栽培している品種は、香緑、さぬきゴールドなど。「オリジナル品種は分からないことも多いですが、高い品質のキウイをつくるために試行錯誤しています」。異常気象や木の病気など思い通りにならないことも多いというが、「それを含めて農業には魅力がある。いいキウイが育った時の嬉しさは格別です」と話す。
今後の課題は、少しずつ認知度が上がってオリジナル品種の需要が増えてきたのに対し、生産が追い付いていない点。担い手不足解消に向けて、ブランド化を含めたさらなる取り組みが必要だ。
ほかにも、力を入れたい取り組みとして生産効率を上げる農業のIT化や、農畜水産物の輸出を挙げている。担い手不足の解消、さらなる品質改良、認知度アップ……様々な施策をバランスよく実施しながら、香川ブランドは世界を目指す。
WSワークショップ
●果実のほかに花きを対象にした「さぬき讃フラワー」、野菜を対象にした「さぬき讃ベジタブル」制度について調べてみよう。
●「ブランド化」は地域にどんな効果をもたらすと思いますか。
【取材協力 : 県農業生産流通課、農政課】
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