「讃岐の食文化」の素朴な疑問②

野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸

column

2022.05.05

Q. 香川県のお土産の醤油豆って、他県にはありませんよね?

A. 本紙の発行日頃には、県内の野菜売り場に、箱入りのソラマメが並び、4月下旬から市中に出回り始めるサワラとともに、郷土料理「押し抜き」を彩ります。

香川県には、押し抜き寿司をはじめとする、いろいろなソラマメ料理が存在するのですが、最も特徴的な料理は、「醤油豆」ではないでしょうか。

香川県は、現在でも全国5位の生産量を誇るソラマメの産地なのですが、過去の統計を紐解くと昭和7年(1932年)には、香川県下で1,888haのソラマメが作付けされていたとの統計が残ります(香川県統計書)。これは、当時の県内の稲作面積(約38,000ha)の約5%に当たり、また、現在の国内のソラマメの作付面積1,770ha(令和2年度野菜生産出荷統計(農林水産省))と比較してもかなりの面積であることが分かると思います。

今でも農家の家庭菜園(さえんじ)の片隅に必ず栽培されている作物で、近所の人から、かなりの量のソラマメをいただき、その料理に苦労したという経験がある方も少なくないかもしれませんが、当時、家庭には、現代とは比べ物にならないほどの量のソラマメがあったと容易に想像ができます。

ソラマメは、収穫が始まる4月末は、柔らかく、また目新しいのですが、5月も中旬に差し掛かると、収穫量も増えるととともに、だんだん皮も硬くなり、食べるのに労力を要します。また、いくらおいしい料理も、毎日同じものを食べていると飽きてきますので、煮豆、炒り豆、餡など、豊富なソラマメ料理のバリエーションが生み出されたのでしょう。

そして、中でも「醤油豆」は、炒った乾燥豆を醤油に漬け込むという複雑な工程を経ることで、食べ飽きることのない深い味わいを持つ料理として完成されており、当時の讃岐の農業生産や食に対するあくなき探求心が凝縮された逸品ではないかと考えています。

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん

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