讃岐の食と工芸品

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸

column

2019.10.17

マコモダケと象谷塗

マコモダケと象谷塗

10月に入りキノコ類のおいしい季節となりました。香川県では秋になると、一般流通するキノコ(シイタケやエノキダケ)だけでなく、秋にのみ流通するキノコ(黄シメジ、ハツタケ)などいろいろなキノコが店頭をにぎわします。中でもシメジの消費量は、常に全国上位に位置していることから(総務省統計局『家計調査』より)、かなりキノコ好きの県民なのかもしれません。

シメジの消費量の多さは、キノコを食べる文化を有するとともに、県内にキノコの生産拠点があることもその要因であり、地元で安定的に生産される食材が消費文化を作り上げるという事例の一つではないでしょうか。

さて、「タケ」の付く食材のひとつに、「マコモダケ」があります。正確にはキノコではなく、真菰(まこも)というイネ科の植物の新芽の部分に「黒穂菌」が寄生して肥大化したものなのです。エリンギや柔らかいタケノコのような独特の食感を持つ食べ物で、県内でも多少の生産があり、この季節になると店頭で見かけることがあります。

マコモダケの特徴的な食感は魅力的なものの、収穫期間が極めて短いことから、食材としては馴染みの薄いものとなっています。しかし、香川県の工芸文化と密接にかかわる植物で、讃岐漆器の中でも「象谷塗」は、マコモがなくては成り立ちません。工程の中で「こも打ち」という作業があるのですが、ここで使われるのが完熟したマコモダケに発生する黒い粉(黒穂菌胞子)なのです。食文化と工芸文化が意外なところでつながっているユニークな植物です。

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん

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