この間、多くの方々にご挨拶させて頂く機会を頂戴したが、その際、香川に来るのは初めてかとしばしば尋ねられた。実は、香川を訪れるのは30数年ぶりである。母方の田舎が愛媛で、たまには陸路で帰省しようということで、宇野から連絡船に乗り、朝もやが煙る高松に渡ってきたのだった。
鉄道少年だった私には、ブルートレイン瀬戸や宇高連絡船、ことでんに乗るという楽しみもあったが、密かに香川で確かめたいことがあった。それは我が家のうどんつゆの正統性である。我が家は両親とも西日本の出身であり、物心ついた時から、うどんは薄い色のつゆで食べるものと決まっていた。しかし、小学生になって外の店でうどんを食べてみると、ご存知のとおり関東のつゆは黒々としており、幼い私は我が家のつゆは変なのではないかと不安を抱くようになった。そこで、うどんといえば讃岐である。そのつゆを見れば、我が家のつゆが正しいものか確かめられると考えた訳である。
高松でうどんを食べた結果は言うまでもなく、両親に疑いの眼を向けた自分を反省したのだが、この際そんなことはどうでも良い。重要なことは、讃岐うどんが確固たるブランドを確立しており、正統性を測るための拠り所となったということだ。この先、国内の働き手が減少していく中にあっても、これまでと同様の経済レベルを維持するためには、製品やサービスの付加価値を高めていくことが不可欠である。その際の鍵の1つは、卓越した技術やブランディングによる差別化にあるが、香川には讃岐うどんだけでなく、特定分野で世界的に高いシェアを誇る企業が数多くあり、人口減少下でのあるべき経営の方向性を示しているように思う。
香川はこうした産業面の基盤に加え、豊かな自然や長い歴史に育まれた観光資源、瀬戸内海や山々の豊富な食材など、優れた素材を数多く有しており、大いなる可能性を秘めていると思う。私も、香川のさらなる発展に向けて、微力ながら貢献していきたい。
小牧 義弘|こまき よしひろ
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