景気判断と実感のギャップ

日本銀行高松支店長 小牧 義弘

column

2020.10.15

1年前には、まさか大嫌いなマスクを真夏にするなんて、思ってもいませんでした。新型コロナとの付き合いは残念ながら長くなりそうです。

そうした中、新型コロナは経済にも大きな影響を与え続けています。日本銀行の全国短観で業況判断をみると、6月に-31と10年ぶりの水準まで悪化した後、9月も小幅の改善に止まりました。緊急事態宣言の下で経済活動は急速に低下した後、徐々に動き始めてはいるものの、まだ水準は低いという実感通りの結果ではないでしょうか。

さて、経済がこのように動いている時、景気はどう判断されるでしょうか。先月の日本銀行の景気判断は、「上方修正」と報じられています。これに対し、「まだ経済情勢は悪いのに上方修正なんてとんでもない」とのご意見を頂くことがあります。このギャップは、景気判断の上方(下方)修正は、経済活動の水準ではなく、方向で判断されることから生じるものです。今回のように経済活動が落ちてきた後に下げ止まると、まだ経済活動の水準は低くても、景気判断は上方修正となります。だからと言って、経済情勢を判断する上で水準を重視していないということではありません。経済の稼働水準は、雇用や物価などに大きな影響を与えます。先に触れた日本銀行の景気判断でも「引き続き厳しい状態にあるが、持ち直しつつある」と、水準と方向性の双方に言及しています。今後も景気判断とその背景について、分かりやすくお伝えするよう努めていきたいと思います。

もう1つ、景気判断で「回復している」と判断した時に、「回復など実感できない」とのご意見を頂くこともあります。このギャップの本質的な原因は、日本経済の成長力(潜在成長率)が非常に低いことにあります。日本の潜在成長率は80年代後半の4%台から低下し、今では1%を下回っています。経済が回復しているといっても、それが年率1%未満では、なかなか実感できないのも仕方がありません。これを克服するには技術革新や新たなビジネスアイデアで生産性を高め、潜在成長率を引き上げていくことが必要です。その底力が香川県にはあると思います。皆さんで力を合わせ、回復が実感できる経済を取り戻していきましょう。

小牧 義弘|こまき よしひろ

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小牧 義弘|こまき よしひろ

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