瀬戸内の宿命、「水」

四国地方整備局長 平井 秀輝

column

2018.05.17

香川県をイメージする時、真っ先に浮かぶのが、うどん県とも言われる「うどん」。では何故、水の少ない香川県で水を多く使う「うどん」が広く普及してきたのだろうか。

よくよく調べてみると、讃岐では昔から上質の小麦が生産されたこと、伊吹島をはじめ品質のよい「いりこ」が多く獲れたこと、古代から塩の産地であったこと、また小豆島は江戸時代から有数の醤油生産地であったことなどから「うどん」作りに適したとのことである。

では、水はどうしたかと言うと、讃岐の人は昔から一滴の水も無駄にしないようにと伏流水を利用したり、ため池を多く造ったり水を大切にしてきた歴史風土がある。

忘れもしない1973年、私が中学生の頃、あの高松砂漠と言われた夏。関東から帰省していて、高松の詳しい事情も知らないまま、汗ばむ夏でもあり、どうしても体を洗いたくて風呂で水浴びをしたことがあった。この時ばかりは、穏やかな祖母にものすごい剣幕で叱られた記憶が残っている。子どもながらに、水は大切にしなければならないと反省したものだった。降雨が少ないことから香川県民の水を大切にするという遺伝子は、こうして脈々と受け継がれていくのだと思う。

節水だけではなく、新たな水資源の開発への挑戦も、同じかと思う。創築以降、空海らによる改修を続けてきた満濃池も、大久保諶之丞が提唱した香川用水も、香川県民が受け継ぐ遺伝子のもう一つの働きの産物ではないか。

何の因果か、今では国土交通省で河川やダムなどによる水利用や調整運用の仕事にも携わっている。香川県民の遺伝子を継ぐ者として、洪水で水に苦しんでいる人、渇水で水に困っている人のためにできることは何かを考えている日々である。

「四国の命」の早明浦ダムは、四国四県に水をいき渡らせており、まさに四国の要である。香川県の中学生は、毎年のようにバスで早明浦ダムに勉強に行っていると聞いている。こういった水を思う行動が、住民一人ひとりの意識を高め、水は大切な資源だと思う心を醸成していくのではないかと思っている。

今年の夏が、水に困ることのない夏になるとともに、水を大切にする心がさらに醸成されることを祈っている。

四国地方整備局長 平井 秀輝

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四国地方整備局長 平井 秀輝

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