MMT 現代貨幣理論入門

著:L・ランダル・レイ、監訳:島倉原、訳:鈴木正徳、解説:中野剛志・松尾匡/東洋経済新報社

column

2019.10.03

本書は今アメリカをはじめ日本でも大きな論争を巻き起こしている「MMT―現代貨幣理論」の入門書です。この理論は登場してまだ浅く、現在の主流派の経済学者からは大きな批判を受けています。この理論がトンデモ理論なのか、デフレ脱却の切り札になり日本経済の再生のシナリオを描く理論かどうかは分かりません。この理論が注目されるのは、どうも日本経済の状況が大きな要因だとも言われています。日本では金利が下がり続け、国の予算は毎年増え続けています。

MMTとはどういうものか、簡単に説明しますと、自国通貨で政府が借金をして国債の発行を増やし、国債を買い続ければ、国民の負担はなく財政破綻もしないと主張します。多くの経済の専門家は、政府が国債を発行しそれによって雇用を生み出し、物価をコントロールできるとは思っていないようですが、MMTは現在の主流派経済学からすれば異端とも言える理論です。

そもそもMMTの貨幣論は人々がお札という紙切れに通貨としての価値を見出すのは、その紙切れで税金が払えるからだということを前提に構築されていると本書にあります。そして今の経済はマクロ経済運営の中心に、中央銀行による金融政策を位置づけ、財政政策についてはとても消極的であるということで、MMTはこれを逆転させます。革命的であり、スキャンダラスな本と中野剛志さんも書かれていますが、読者の貨幣観を一新させるかもしれません。

山下 郁夫

宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

坂出市出身。約40年書籍の販売に携わってきた、
宮脇書店グループの中で誰よりも本を知るカリスマ店長が
珠玉の一冊をご紹介します。
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宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

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