心を豊かにするデザイン ―讃岐モダンへのあゆみ―
桜製作所 社長 永見宏介
2019.10.03

60年代に入り全国で商業施設の店舗デザインが盛んに行われ、JCD日本商環境デザイン協会もこの頃発足した。高松の商店街も例にもれず何件もの斬新な店舗が建ち並んだ時代だ。半世紀たったのに、いまデザインされたものとして見ても違和感ない新鮮な感覚であることに驚く。
先月14日から高松市歴史資料館で開催中の、香川のデザインの系譜を辿る展覧会は、中味の濃い見応えある展覧会だ。特に昭和の商業デザイン界で全国トップランナーとして数々の業績を遺した高松の「二人の登」さんにスポットを当てたことは意義深い。高松工芸高校の正門前にあった「美術工房」の碓井登と高松商業高校近くにある「寒川商業建築」の寒川登は、全国からたくさんの仕事を頼まれた。毎月の「商店建築」は彼らの仕事を紹介するための雑誌かと思うほどだった。しかし商業デザインは時代の流行とともに消えて無くなるため、秀逸なデザインが後世に残ることは難しい。「二人の登」さんのために弊社が制作した家具も、そのほとんどの店舗とともに、今はもうない。
平成に入ると、全国何処でも同じブランド店舗の金太郎飴的なデザインが目立ち始め、創造性が失われているような気がした。同時に商業空間の仕事は規模も大きくなり、個性的な表現を追い求めるようになっていく。GAFAと呼ばれるプラットフォーム大手が世界の商圏を席捲する中、今後どんな方向性で商業デザインが切り拓かれるのか。地方都市から発信される、讃岐モダンの次なるあゆみに期待したい。
永見 宏介 | ながみ こうすけ
- 1959年 高松市生まれ
1982年 香川大学経済学部卒業
1983年 流スタジオに勤務(87年まで)
1987年 株式会社桜製作所 入社
1996年 代表取締役社長 就任
- 写真
おすすめ記事
-
2020.03.05
モダンデザインが結ぶ暮らしの夢展
桜製作所 社長 永見 宏介
-
2012.01.19
「真っすぐに曲げる」手仕事の力
桜製作所 代表取締役 永見 宏介さん
-
2020.02.06
太田先生を偲んで
大谷早人
-
2020.01.03
なぜ香川には美しいものがたくさんあるのか (後編)
中條亜希子
-
2019.12.05
なぜ香川には美しいものがたくさんあるのか (前編)
中條亜希子
-
2019.11.07
東京で香川の雰囲気を
灸まん美術館学芸員 西谷美紀
-
2019.09.05
近くて遠い場所への旅
高松市美術館 学芸員 毛利直子
-
2019.08.01
香川をギュッと詰め込んだ邦坊デザイン
灸まん美術館学芸員 西谷 美紀
-
2019.07.04
鎌田郁雄さんと四谷シモンの人形
永見 宏介
-
2019.06.06
アート! 男木島と東京・虎ノ門 ―ジャウメ・プレンサ 《ルーツ》―
-
2019.05.02
リアリティーと存在とホワイボン
川島猛アートファクトリー理事 岡田佳代子
関連タグ
最新紙面情報
Vol.412 2025年08月21日号
「ここに来て良かった」 生徒一人一人に寄り添って
学校法人村上学園 理事長 村上学園高等学校 校長 村上 太さん
モニタリングの知見を生かし 地域と「顔の見える対話」を
日本銀行 高松支店長 稲村 保成さん
諸機関と柔軟に連携し 四国の中小企業に寄り添う
独立行政法人 中小企業基盤整備機構 四国本部長 田中 学さん
まち全体を一つの「宿」に見立て 古民家を核に日常風景の魅力を発信
NIO YOSUGA 代表取締役 竹内 哲也さん/菅組 社長 菅 徹夫さん
生徒の「やってみたい」が地域とつながる 進化するボランティア団体「TSUNAGU」
大手前丸亀中学・高等学校