アート! 男木島と東京・虎ノ門 ―ジャウメ・プレンサ 《ルーツ》―

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2019.06.06

ジャウメ・プレンサ「男木島の魂」 Photo:Osamu Nakamura

ジャウメ・プレンサ「男木島の魂」
Photo:Osamu Nakamura

2010年、第1回瀬戸内国際芸術祭が開催される前年1月、高松市で整備を予定していた男木島のフェリー待合所(男木交流館:「男木島の魂」)にアートを入れようという話がもちあがった。当時パブリック・アートといえば、直島に草間弥生の「カボチャ」はあったが、アーティストが建物を作品化するなど想像もつかないものであった。

総合ディレクターの北川フラムさんから「プレンサ」という作家名があがった。プレンサはスペインの世界的なアーティストである。2004年アメリカ、シカゴのミレニアムパークに設置された高さ16mのツインタワーの大型ディスプレイにシカゴ市民約1000人の顔を映し出し、口から水が噴き出る巨大噴水「クラウン・ファウンテン」を制作し、人気の観光スポットになっていた。限られた予算と時間の中、はたして芸術祭に間に合って実現できるかどうか不安であった。

翌月、さっそくプレンサがやって来て現地を下見し、ほどなく完成イメージ案が送られて来た。画像を見て度肝を抜かれた。なんと建物の上に巨大な大仏像のようなものが鎮座していたのである。しかしこの案はさまざまな制約の中で実現せず、現在のような貝の形の本体にさまざまなアルファベットを透かしてつなげた大屋根をかぶせた形状に落ち着いた。

この大仏が再び姿をあらわしたのは、2014年11月であった。東京「虎ノ門ヒルズ」のオーバル広場に設置された高さ約10mの巨大なモニュメントで、作品名は《ルーツ》。8つのアルファベットの文字を透かしてつなげ、膝をかかえて座る人物をかたどったものである。それを初めて見たとき、男木島にこんな大仏がどこ吹く風と座っていたらどうだったろう―と楽しい気分になった。

住谷晃一郎 | すみたに こういちろう

香川県文化芸術局 美術コーディネーター

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