現役歯科医師が守る 歯と葉の健康

株式会社樹木新理論 代表取締役社長 田所 弘さん

Interview

2013.09.19

樹木新理論の代表・田所弘さん(57)は、現役の歯科医師でもある。社名だけではどんな企業なのか、見当がつかない。

「20年前に読んだ環境問題に関する本の中に『口から環境汚染を考える』という記事があって。酸性雨で木が枯れることと、酸で虫歯ができることは似ていると感じました」

あるとき、歯科医院開業時に植えた松の葉が枯れ始めた。診察室からも見え、患者からもきれいだと喜ばれている木だった。田所さんが「庭木の達人」と呼ぶ、庭師の浜口育弘さんに対処してもらうと、みるみるうちに回復。誰もがそのまま枯れると思っていただけに、驚かされた。

なぜ枯れなかったのか。浜口さんは長年、樹木の葉の化学分析を行っており、木の健康状態が葉の成分に影響すると考えていた。松葉の状態から、栄養バランスが崩れていると知り、足りないものを補ったのだ。職人の経験とデータに基づいた分析で、松がよみがえった。それを目の当たりにした田所さんは「その技術を広めたい」と考えるようになった。
田所さんは近くの山でも、多くの枯れ木を見掛けることに不安を覚えていた。「人は植物の力を借りて生活しています。木が枯れるのは、環境の変化の表れ。私たちが元気に暮らせるのは、植物も元気であってこそ」。頭をよぎったのは、かつて読んだ本のこと。大気汚染から酸性雨が降り、その成分が土壌を変化させ樹木に影響を与えていると考えた。

変わりゆく環境の中で、木を育てるにはどうすればいいのか。新しい視点から樹木の管理方法を考えたいと、樹木新理論を立ち上げた。

2006年にかがわ産業支援財団のベンチャースタートアップ支援事業に採用され、樹木の化学分析を進めた。経済産業省などの事業支援もあって完成したのが、植物の窒素代謝に必要な「モリブデン」を主成分とする「森ぶ源シリーズ」だ。

植物の持つ酵素の働きを活性化させるミネラル剤で、農薬とも肥料とも違う。人間にとってのサプリメントのようなものだ。葉や土に散布できる液体状の「健育くん」、土に混ぜる粒状の「元気くん」、水に溶かす粉末の「美育さん」、スティック型の「活力さん」がそろう。

「元気くん」と「美育さん」は、水溶性の袋に入っているため袋ごと土に入れたり水に溶かしたりでき、手が汚れず計量の手間も省ける。「活力さん」は幹に直径1センチほどの穴を開けて直接差し込む。今年からインターネット販売を開始。秋には県内のホームセンターでも販売を始める。

「木の『体力』をアップさせる予防的発想です。葉がいきいきとしたミネラルバランスならば、植物は元気。歯科医療に通じるものを感じます。口は健康の入り口ですから、歯のメンテナンスや虫歯の予防が大事。人も木も必要なのは同じことですね」

現在、社員は3名。商品の管理や営業を効率的にこなさなければならない。「研究と開発に徹してきましたが、これからは商品を売っていかなければ。まずはいいものだと知ってもらいたい」

家庭の庭木や草花に、気軽に使ってほしいと言う。「山や森の木々も大切ですが、自宅の庭木は思い入れのあるものが多いと思います。うちの歯科医院の松も同じです。大切な木々を枯らすことのないよう、お手伝いできれば」。歯と葉の健康、ひととき(人と木)の安らぎの空間を求めて走る田所さん。その足で進むのは、誰も歩いたことのない新しい道だ。

田所 弘 | たどころ ひろし

1956年4月8日 丸亀市生まれ
1981年3月 岩手医科大学歯学部 卒業
1985年5月 田所歯科医院 開設
2005年11月 株式会社樹木新理論 設立
写真
田所 弘 | たどころ ひろし

株式会社樹木新理論

所在地
丸亀市塩屋町4丁目5-2
TEL
0877-24-2080
資本金
2000万円
社員数
3名
事業内容
樹木用ミネラル栄養・肥料の製造・販売
樹木のミネラル分析研究
URL
http://www.jumoku.jp/
確認日
2018.01.04

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