つなぐ

メロディ・インターナショナル CEO 尾形 優子

column

2016.02.04

瀬戸の海はゆったりと水を湛え、私たちは意識することなくせとしるべを通り過ぎる。空では月が満ち星は瞬いている。

私たちの経営方針の一つに、産学官事業や、学術的な取り組みを企業の側から支えるというものがある。当初、大学発ベンチャーを名乗ることが大学側にとっても喜ばしいことだと思い、アカデミアにラブコールを送ってはみたが「のれんに腕押し」という感が否めなかった。企業という商売人気質は、なかなか理解してもらえないのかもしれない。

半年前に会社を設立した時「もう一度ベンチャーからやり直しだ」と思っていたら、ここ最近のトレンドでは、ベンチャーと呼ばずスタートアップというらしい。ベンチャー企業とは和製英語で、シリコンバレーでは通じないそうだ。

グーグル、フェイスブックなどはシリコンバレーで投資を受け、巨大企業へと育っている。それを受けてか現在アベノミクスの政策の一つとして、日本の優れた大学の先端技術を商業化し、大きなビジネスに育て上げようという動きが盛んだ。その為に国は、大学発ベンチャーに対して、シリコンバレー流を学ぶことを奨励している。

私たちもその波に乗り応募してみたところ、取り組みが評価されて、様々なトレーニングプログラムに参加することが出来た。一番の驚きは、日本ではベンチャーが軌道に乗り中小企業になってしまうと、そこに満足してその先に進むことが難しくなってしまうということであった。本場のスタートアップは、銀行からの借金に縛られることなく、VC(ベンチャーキャピタル)から大きな投資を得て、速いスピードで1,000億企業を目指すのだ。

日本の大学には多くの非常に優れた技術がある。それが、専門性と先進性の繭の中で育まれている。他方、優れたビジネスセンスをもった商売人が多く活躍し、新しい商材やビジネスモデルを探している。しかし両者のベクトルは正反対で、互いの考え方を理解し合うのは難しそうだ。

そこで私たちが出来ることは、異質な両者を「つなぐ」媒介者であることだ。一口につなぐといっても、経験上容易ではない。研究者の成果や魂を売り渡すのでも、商売人を儲からない研究に付き合わせるのでもなく、広い視座を提示し、同じ頂を目指していることを理解してもらい、マイルストーンを示すのだ。そうしてはじめて新しい価値を生み出す事が出来る。それが「科学技術の商業化」ということだ。

メロディ・インターナショナル CEO 尾形 優子

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