干支の飾り

桜製作所 社長 永見 宏介

column

2016.01.21

初詣には毎年、京都の上賀茂神社へ行くことにしている。今年も元旦にお参りした。新しいお札を頂くのと木彫りの干支をお土産にするのが我が家の恒例行事だ。

多くの神社で木彫りの干支を頂くことが出来るが、父の時代からずっと上賀茂神社の干支を頂き飾っている。一刀彫の勢いのある鑿(のみ)で彫られた小さな干支の飾りには生命感がある。正月は十万人の参拝客があるそうだ。いくつくらいこの干支は作られるのだろうと想いを巡らすが、きっと想像出来ないほどの数なのだろう。作っている職人さんはどういう人達なのだろうか、一日に何個くらい作るのだろうか、などと次々と問いが湧き出てくる。

それに比べたら数は大変少ないのだが、弊社でも年末のご挨拶を兼ねてお得意様に木製の干支を作ってお届けしている。十二支が多分もう3巡目だ。昨年の秋に他界した父がこれまでずっとデザインしていたのだが、今年の「申」で最後になった。どうしても数百個程度しか作れないので、毎年お配り出来ない方がいて申し訳ないことをしている。それでもなんとか続けてきた。同じ形の物を作るので出来るだけ機械で工作出来るよう効率を考えるのだが、なぜか手間ひまばかり掛かってそんなにも数が作れないのだ。不思議なことだと自分でも思う。

『犬馬難鬼魅易(けんばむつかしきみやすし)』という言葉がある。画家に絵を描いてもらうのに、犬や馬など実在の身近な動物は難しく、鬼のような空想のものは表現し易いものだという意味であると聞いた。十二支は「辰」以外は全て実在の動物なので形にするのは結構難しい。

年末に、日本美術工芸界唯一ご存命の文化勲章受章者で金沢の大樋長左衛門先生からご丁寧にお礼の電話を頂いた。先生は陶芸家だが、若い頃はジャンルの違う彫金を学ばれていたそうだ。家具デザインをしていた父が毎年作る干支は大変優れていて、造形作家としても素晴らしかったとお褒め下さり、亡くなったことを大変残念がって下さった。

干支の飾りは一つ一つ木目や色艶の違う木という素材で作るため、みんな顔つきや表情が違って見えるのはとても面白いことである。そしてどれもとても可愛らしく思えてくる。これを引き継いで、来年も何とか愛らしくも新しいデザインの干支をお届け出来るよう努めていきたい。

桜製作所 社長 永見 宏介

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桜製作所 社長 永見 宏介

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