建築の日本展

桜製作所 社長 永見 宏介

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2018.07.05

展示風景:「建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」 森美術館、2018年撮影:来田 猛 画像提供:森美術館(東京)

展示風景:「建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」
森美術館、2018年撮影:来田 猛 画像提供:森美術館(東京)

東京・六本木の森美術館で開館15周年の記念として開催中の「建築の日本展」を観に行った。見どころはいくつもあったけれど特に驚いたのは、香川県庁舎の精巧な模型や神代雄一郎のデザインサーヴェイ(現地調査)による女木島や引田の集落の資料など、多くの香川にある遺産が展示されていたことだ。いま世界中で日本の建築が注目されている。しかし全国にたくさんある名建築の中から選りすぐられた素材の多くが香川にあるというのは意外なことだ。

1958年に完成した香川県庁舎は現在、耐震補強のために随分と大規模な改修をしている。その間に、60年使われたいくつかの家具什器が東京の美術館で展示されて多くの人々に見てもらえるというのは、素晴らしいことだ。

香川にはまだ他にも、先頃全面改修を済ませた栗林公園にある商工奨励館や五色台にある日本建築学会賞を受賞した山本忠司設計の瀬戸内海歴史民俗資料館、大江宏設計の県文化会館、芦原義信設計の元県立図書館(現・アイパル香川)、高松市中央通沿いに建つ百十四銀行本店ビルなど、半世紀を経て大切に維持され現役で使われ続けてきた建築物がいろいろとある。

海外に目を向けると、遠くはインド北部にあるチャンディガール(Chandigarh)で1950年代に、ル・コルビジェがピエール・ジャンヌレらと都市計画を引き受けて数多くの建築物が造られた。潤沢な予算で建てられた訳ではなかったので、遺された建築の数々は時代の経過で老朽化が激しく、使われていた家具類は廃材同様に処分されたのもかなりな量だ。フランスのギャラリストが、インドの現地からこのようなゴミの山を買い取ってヨーロッパに持ち帰った。2000年代になると廃材同様だったイスやテーブルは修理されて少しずつ売りに出されるようになる。この時代のデザインが一部でブームのようになり、やがてこれらの古い家具が、次々とオークションで高値を呼ぶようになった。世界中のコレクターが競いあって買い漁り、いまではイス1脚が300万円もの値段で取引されているそうだ。

今回の展覧会で香川県から出品されたインテリアの数々は、歴史的にも同じように貴重な扱いを受けて当然のことだと合点した。展覧会は、9月中頃まで開催しているのでぜひ、上京の折に観に行かれることをお勧めしたい。県民ならきっと誇りに思うだろう。

建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの

【と き】9月17日(月・祝)まで
【ところ】森美術館(東京都港区六本木6-10-1)
【観覧料】一般1800円、高校・大学生1200円、4歳~中学生600円、65歳以上1500円

桜製作所 社長 永見 宏介

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