天体望遠鏡博物館

桜製作所 社長 永見 宏介

column

2016.04.21

八十八カ所巡礼結願の寺、大窪寺がある山里にさぬき市立多和小学校があった。廃校になったのでリユースを企てた人がいる。彼は山深い過疎の里に、天体望遠鏡を展示する博物館を作ろうと動き始めた。全国の天体観測のマニアや教育機関、果ては海上保安庁などが所有していて今は使われなくなった古い天体望遠鏡を集めて修復、保管、そして展示する計画だ。仕掛人は村山昇作さん。約20年前に日本銀行高松支店に赴任してから、香川には大変縁の深い方だ。前総裁の白川方明氏と同期であったので総裁にこそならなかったが、肩を並べる"凄い"人だ。そのくせ破天荒で型破りな経歴の持ち主である。京都大学のiPS研究で山中伸弥博士がノーベル賞をとる前からその事業化に尽力してこられたことはその一つだ。

県内の製薬会社で社長を10年ほど務められたほか、無農薬農園を始めるなど数々の事業に関わってこられた。そして今年3月13日、天体望遠鏡博物館をオープンさせたのである。先日グループで見学した折、村山さんご本人が解説をしてくださった。ただ望遠鏡をたくさん展示しているだけかと思っていたら、昭和5年に日本で初めて輸入された貴重なものから国産の最先端技術を駆使したものまで、ドイツの光学技術をいかに輸入し国内メーカーが歩んで来たのかという経緯も分かる、世界的な視野でも素晴らしい内容に驚愕した。

私も中学生の時、五色台少年自然センターで天体観測をしたのがきっかけで写真にハマり、親友と天体写真を撮るため夜な夜な歩き回ったことが思い出された。当時世界最高水準を誇っていたニコンのF2フォトミックを、貯めていたお小遣いを全部注ぎ込んで買ったが、デジタル時代になりタンスにしまわれて久しい。村山さんは半世紀前に6万円で買った天体望遠鏡をずっと使っていて、今回この博物館に展示するために自宅から運んで来たというから、そんな意味でも"凄い"人だと尊敬して止まない。その天体望遠鏡もあと半世紀すればきっと大変な貴重品になるに違いない。

反射鏡研磨の神様と言われた天文家、中村要が磨いたレンズの展示もある。人間の手で磨くレンズの精度の高さにマニア垂涎のお宝なのだそうだ。現在、ニコンが作るレンズはコンピューター管理されていて人間が近づくと体温で歪みが出るのでそれを制御して作るそうだ。いつの時代にも人が追求した最高の技術がある。温故知新を堪能できる一日だった。

※永見さんには「さぬき美探訪」で今後ご執筆いただきます。

桜製作所 社長 永見 宏介

写真
桜製作所 社長 永見 宏介

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ