四国遍路の経験

日本銀行 高松支店長 高田 英樹

column

2022.12.01

雲辺寺の参道

雲辺寺の参道

今年7月に四国八十八ヶ所霊場を回り終えました。昨年5月の香川県赴任後に回り始めたので1年と少し。流石に歩きではなくレンタカーで行きましたが、運転に自信がある訳ではないので、狭い道を通って行く何ヶ所かは、近くの街から地元のタクシーにお願いしたりもしました。

静かな境内を歩いて本堂や大師堂で手を合わせると、柄にも無く厳かな気持ちになります。八十八ヶ所でこれを繰り返すのは他では得難い経験でした。祈るのは家族のことなど。自分自身のことは諦めもつきますが、家族を含め、自分自身以外のことは機会があるとつい神仏に願ってしまいます。自分よりも自分以外のことを一生懸命祈る人は多いのではないでしょうか。
本誌読者から薦められて訪れた 本山寺の五重塔

本誌読者から薦められて訪れた
本山寺の五重塔

一番印象に残ったお寺を時々尋ねられます。長距離や隘路のドライブも含めてそれぞれ印象深いのですが、敢えて挙げれば霧の中の雲辺寺でしょうか。初めて行った時は偶々霧がかかっていて、一面真っ白な中を五百羅漢像に見守られつつ参拝に向かうと、異世界に迷い込んだような不思議な心地がして、非常に印象に残っています。ただ、境内の様子があまり見えなかったことに加え、天空のブランコでは真っ白な背景で中年男がブランコをしている寂しげな写真が撮れてしまったこともあり、晴れた日に改めて出直しましたが。

天気や季節によって変わる札所の様々な表情を知りやすいのは、四国に住んでいる利点です。運転に自信が無いこともあって、八十八ヶ所全てを2周目回るのは尻込みしていますが、今でも、個々の札所の近くを通る際には、時間があれば立ち寄って以前とは違う景色を見つけるようにしています。

私の八十八ヶ所の回り方は、家族のことなどを祈りつつ、周辺の名所旧跡も訪れて四国を知ることも併せて行うものでしたが、精神的な目的により重きを置く人も多いと思います。ただ、海外の方も含めて、四国遍路への関心が広がりつつある中、四国遍路をする人の動機や背景はより一層様々になっていくと思います。他では得難い経験が出来る四国遍路が、四国の内外を問わず、より多く、より多様な人々に親しまれ、後世に向けて国内外に一層広まっていくことを願っています。

高田 英樹|たかだ ひでき

略歴
1972年 愛知県生まれ
1995年 東京大学経済学部 卒業
     日本銀行 入行
2007年 金融市場局企画役
2009年 金融庁へ出向
2011年 政策委員会室企画役
2013年 金融市場局企画役
2016年 政策委員会室経理課長
2018年 金融市場局総務課長
2019年 総務人事局人事課長
2020年 総務人事局総務課長
2021年 高松支店長
写真
高田 英樹|たかだ ひでき

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ