千年続いた遍路文化を千年先へ…
世界遺産登録に向けて機運醸成
NPO法人遍路とおもてなしのネットワーク
専務理事 岩澤健さん・事務局長 大西信文さん
2025.03.06

第10回おもてなし遍路道ウォーク出発式には約400人が集結(2月23日、高松市・八栗ケーブル登山口駅前)
同ネットワークは2006年設立。累計約4万7000人に「遍路大使・自転車遍路大使任命書」を授与、小学生が保護者と一緒に日帰りで歩き遍路を体験する「親子お遍路ウォーキング」の実施や「おもてなしステーション」の募集をはじめ、四国遍路の文化と歴史を守り伝える活動に取り組んでいる。おもてなし遍路道ウォークもその一環だ。
歩き遍路の全行程約1200キロを各10キロ程度・105区間に分け、参加者は好きな区間を選び、遍路道を歩くチームとお接待を行うチームに分かれて一斉に活動する。初年は香川県内のみで実施して約220人が参加、翌年から四国全域に拡大し、コロナ禍で中断も経ながら2023年には一気に5000人の壁を越えた。「当初は全行程を網羅できると思っていませんでしたが、22年以降、さまざまな企業・団体のご参画をきっかけに四国4県がつながりました。今年から四国八十八ヶ所霊場会共催の下、先達会にもご参加いただいて、初心者との交流を通じた文化継承も広がったのでは」と大西さん。
ウォークの道中で気づいた点は、四国遍路世界遺産登録推進協議会を通じて行政や地域に情報を共有。参加者からは「普段も通っている道だが、遍路としてゆっくり歩くと風景を見る目が変わり、お遍路さんを大切にしてきた地域の歴史をあらためて感じる」といった声も届いている。
活動の背景には、遍路の減少傾向と、四国遍路の世界遺産登録に向けた機運の醸成がある。岩澤さんは「近年は外国人が増え、人気が高まっているように見えますが、遍路数の目安となる太龍寺ロープウェイの利用者でみると、約20年前の3分の1ほどに減少。地域のお接待も人口減や高齢化などで減っているのが実情です」と指摘。遍路文化活性を目指すおもてなし遍路道ウォークが、世界遺産登録に向けた文化庁からの課題「資産の保護措置の充実」「顕著な普遍的価値の証明」「地域コミュニティの積極的な参画」のうち、地域の参画を象徴する取り組みとしても活用できる可能性に着目した。
参加者が1万人を超えた今年は特に手応えが大きく、「ざっと四国で400人に1人が参加したことになる。地域が盛り上がっている大きな証になるでしょう」と岩澤さん。一番札所・霊山寺で参拝の作法に触れ、遍路を始めた自身の思い出も重ねつつ、「お遍路って楽しいんだ、と気軽に足を踏みいれてもらえるきっかけと土壌を四国につくり、千年続いた遍路文化を今後千年先にも伝えていける一助になれたら」と意気込みを語った。

出発式の準備を進めた同NPOメンバー(一部)
戸塚 愛野
NPO法人遍路とおもてなしのネットワーク
- 住所
- 香川県高松市高松町2306番地3-3階
- 代表電話番号
- 087-814-5459
- 地図
- URL
- https://www.omotenashi88.net/
- 確認日
- 2025.03.06
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