日本を代表するドライフード「干し柿」

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸

column

2015.11.19

干し柿の風習

干し柿の風習

温度が下がり乾燥して風が吹き始める11月から冬場にかけては、ドライフード(乾燥食材)を作るのに適した時期です。11月の干し柿に始まり、切り干し大根やサツマイモの切り干し、文献には干しマンバ(ヒャッカ)という記述も登場します。一方、海岸部では、シタビラメ、カンゾウ、タコなどを干す風景も見られます。

ドライフードの中でも、干し柿は今でも根強い人気があります。香川県では風が肌寒くなる11月になると、一軒家の軒下だけでなく、マンションのベランダにも干し柿が吊るされるという風景が見られるようになります。干し柿専用の渋柿も11月をピークに大量に出荷されます。

干し柿の作り方は実に簡単で、渋柿の皮をむき、雨のあたらない屋外で20日間ほど乾燥させるだけです。完成を20日間待つという体験は、非常にあわただしくなった現代において、お子様のいるご家庭ではぜひ親子で挑戦していただきたいスローフード。出来上がった干し柿も、おやつとしてだけでなく、香りの強いチーズと合わせると実に美味なオードブルにもなります。
碁盤柿

碁盤柿

さて、渋柿は地域独特の品種が栽培されており、県内で栽培されている有名な渋柿が碁盤柿(五番柿)です。碁盤柿は、その名のとおり碁盤の足の様な角ばりや溝がある形が特徴。しかし、最近は渋柿の需要の低下とともに市場での流通量も著しく少なくなってきています。

私見ですが、地域の食文化というものは、素材の流通量が一定量あり、県内の量販店などで日常的に入手出来ることで維持されると考えています。2014年度の高松市中央卸売市場での碁盤柿を含めた県産の渋柿の取り扱いも31トンと、20年間で約5分の1に減少しています。需要量と供給量が年々減少し、干し柿という一つの文化が消えつつあるということを実感します。

ドライフードは貯蔵食材という意味合いが強く、生鮮食料品流通が発展し、日常的に新鮮な食材が手に入れられるようになった昨今では、乾燥食材を家庭で作るということはほとんどしなくなりました。一方で、最近は野菜を数時間天日干しにしてから料理に利用する、簡易な干し野菜がにわかにブームとなっています。この冬は、ぜひドライフードに挑戦してみてください。

干し柿の作り方

干し柿を使った料理の一例 干し柿とチーズのカナッペ

干し柿を使った料理の一例 干し柿とチーズのカナッペ

(1) 渋柿のヘタの葉を取り除く。
  この時、枝を折らないように注意。
(2) 先端の部分のみを残し皮を剥く。
(3) 枝の部分にひもをかける。
(4) 殺菌のため、熱湯にさっとくぐらせる。
  表面が煮えてしまうと渋が抜けないので注意。
(5) 風通しの良い屋外に吊るすと、2~3週間で食べられるようになる。

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん

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