
店頭にある金糸の刺繍が目印

「響や」は7月に移転し、売り場面積は4~5倍に
三豊市の祭礼SHOP響や代表の織田幸宏さん(32)は「華やかなちょうさだけでなく、人とのつながりを感じられるのが祭りの魅力」と話す。はっぴや手ぬぐい、地下足袋、和太鼓など祭礼用品を扱う「響や」は開店から5年目を迎えた。四国では珍しい専門店で、小豆島や愛媛からもお客さんが来るという。
オリジナルデザインの手ぬぐいを作ったり、はっぴやシャツに刺しゅうを施したりもする。織田さんは一人で店を切り盛り。独学で、パソコンのデザインソフトと刺しゅうミシンを扱えるようになった。
9月末から10月末まで、ちょうさの出る秋祭りが県内各地で開催される。織田さんはそのほとんどに担ぎ手として参加。「現場に出ているからこそ、お客さんが欲しいものが分かる。何よりも僕自身が祭りが好きという気持ちが大きいですね」
はっぴの下に着る「鯉口シャツ」は、カジュアルなデザインのものや、携帯電話や小銭がしまえるファスナー付き内ポケットのあるものなどを独自に考えた。

パソコンで作ったデザインデータ(上)を基に、刺しゅうミシンが動く(下)
工業用刃物を製造する会社に勤めながら趣味で祭礼用品を販売する店を始めたが、地元の先輩に「やりたいことをやれ」と背中を押され、本業にした。店名には好きな「響」の字を使う。通っていた中学校の音楽室に「響」という書がかかっていた。書道のことは分からないが、なぜか胸に迫るものがあり、先生に頼んで譲ってもらった。その書は今、作業場に飾っている。
祭りの盛り上がりには、音も重要だ。太鼓台にはもちろん太鼓が積まれている。織田さんは、音にほれ込んだ石川県白山市の「浅野太鼓」を販売する。「聞けば違いが分かると思います」
オリジナルデザインや刺しゅうの注文が多く、秋祭りが近づくと新規注文を受けられなくなる。夜中まで作業を続ける中、ミシンの故障に「もう嫌だ」と思うこともしばしば。それでもちょうさを担ぐと「やっぱり祭りっていいな、これからも携わっていきたいと思うんです。好きなんですよね」
秋祭りが終わると、その年の仕事を振り返り、改善点を考える。「お客さんの要望にさらに応えられるよう技術力と対応力を高めていく。いずれは縫製工場を持ちたいけれど、スタッフを雇う器量はまだまだ。人としてもっと成長したい」
織田さんの住む地域は今年、ちょうさの新調を予定している。30~40年ごとに新しくするのが平均的だという。織田さんの父も、織田さんと同じ歳のころに新調に携わった。「祭りを次の世代に伝えていきたい。父も同じ気持ちだったのでは。体力が続く限り、各地の祭りに参加したいですね」
鎌田 佳子
織田 幸宏|おだ ゆきひろ
- 略歴
- 1987年 三豊郡(現・三豊市)豊中町生まれ
2003年 豊中中学校 卒業
自動車板金、工業用刃物製造などを経て
2015年 祭礼SHOP 響や 開店
祭礼SHOP 響や(おとや)
- 住所
- 香川県三豊市豊中町本山甲1184-1
- 代表電話番号
- 0875・24・8821
- 事業内容
- 刺しゅう、プリント加工、はっぴ製作、祭礼用品販売、浅野太鼓正規代理店
- 地図
- 確認日
- 2019.07.20
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