“旅”を切り口に、人や地域の交流を増やしたい

㈱JTB四国広域代表 高松支店長 野浪 健さん

Interview

2019.08.01

旅の醍醐味は「人との出会い」にあるという。大学時代はアジアやアメリカを放浪し、風習も考え方も違う人たちと出会い、多くの刺激を受けた。「おおらかな時代だったからかもしれませんが、街で農家の人に話しかけられてそのまま家まで行ってご飯をごちそうになったり、バーで一緒になった同世代の人と飲んで意気投合したり。観光名所よりそういう経験の方が記憶に残っています」

一方で、考えさせられたことも。「豊かではないといわれる国に、何かできることがあればと思いながら行ったものの、現地の人と話をして暮らしぶりを知ると、来る前のイメージは思い込みだったなと。“豊かさ”とは何か―世の中にはいろんな価値観があると思いました」
ワシントンDCに出張した際の様子

ワシントンDCに出張した際の様子

入社して数年は、添乗の業務も多かった。「参加者が、美しいもの、おいしいものに感動する場面に立ち会えるのは嬉しかった」。営業職として企業を訪問し、旅行を提案する仕事も経験した。社員旅行はただ楽しむ以外の“目的”もある。例えば、社員どうしのコミュニケーションを活性化させる、人材育成など。会社の課題をじっくり聞き出し、その解決を旅行でお手伝いする仕事はやりがいがあったという。

ある美術館の「友の会」会員向けの旅行を企画した時、最初の年は日帰り、翌年は1泊2日と会員が増えるのに合わせて行程が少しずつ長くなっていった。「旅を提案するだけではなく、学芸員さんと一緒に年月をかけて友の会を育てていく。最終的にフランス・イタリアの美術館巡りの旅行が実現した時は感慨深かったですね」

商工会議所青年部の全国大会開催の仕事に携わった時は、地元企業の人たちと経営についての思いや地域の課題、活性化のアイデアを毎日のように語り合った。広島県庁に出向し、大河ドラマを切り口に観光プロモーションを実施、その政策立案の業務にも携わった。「地域の人たちと深くかかわることが、こんなにおもしろいんだと思いました」

旅の提案と地域活性化の取り組み。仕事の内容は違うが、人と人、地域と地域の“交流”を広げていくという点では同じだという。「移動や宿泊だけじゃない。そこに行ってみたいと思えるような“目的”をつくるのも、私たちの役割だと思っています」
香川に行きたいと思ってもらう取り組みの一つとして2018年秋、琴平の夜型観光を提案する「こんぴら詣で(KONPIRA MODE)」を開催した。日本最古の芝居小屋「金丸座」や「琴平町公会堂」、酒蔵「金陵の郷」をライトアップ、マルシェなどを行い約2000人が訪れた。

「お土産物店や飲食店がしまると、夜は何もすることがないという声も多くて。素晴らしい素材があるのにもったいないと思ったのがきっかけでした」。磨けば光る素材が香川にはまだまだある。それを発掘して発信するお手伝いがしたいという。

ネットを検索すれば、旅に出なくても情報が手に入る時代。それでも「街の熱気、人との出会い…、そこに行かなければ感じることができない刺激が旅にはある。そういう魅力を伝え続けたいですね」

野浪 健 | のなみ けん

略歴
1965年 広島県生まれ
1984年 鳥取県立米子東高等学校 卒業
1988年 早稲田大学社会科学部 卒業
1988年 ㈱日本交通公社入社 松江支店勤務
2013年 ㈱JTB中国四国 高知支店長
2017年 同 営業部長
2018年 同 高松支店長
2019年 ㈱JTB 四国広域代表 高松支店長

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