
洋式・・・・・・
改めて「洋式」というと逆に古臭く感じてしまう。それほど生活の中では当たり前になってしまっている。
しかし、こうした中でも「和」に触れるとほっとする。「癒やし」や「郷愁」ではなく、それは「日本人としてのアイデンティティーなんです」と株式会社桂の代表取締役社長、奥山 功さんは話す。
時が止まる、時を超える着物
「友人が仕事の合間によく店に立ち寄るんです。時が止まったような雰囲気で『和める』と言ってくれるんです」と話す奥山さん。確かにこの空間は不思議な趣がある。
常に逆風の中を一歩一歩進む
「ファッションとしての着物が注目を集めているのは確か、でもそれが少数であるから目立っているのです」と分析する。
実際、日本全国の着物の市場は、30年前には2兆円だったものが現在では4000億円、実に5分の1にまで減少しているそうだ。奥山さんがこの業界に入ったのがちょうど30年前。それから市場は右肩下がりに縮小を続けていることになる。
「常にアゲインストの中です。でも、逆に予測し易かったですね。この中で一歩一歩前に進む方法を考えてきました」
厳しい状況の中で桂が目指したものは「地域一番店」だ。
地域一番店への道のり
山形県生まれ東京育ち。役者経験もある奥山さん。仕事で縁の深かった呉服の世界に飛び込んだのが約30年前。しかも、商売の場に選んだのは高校時代前後4年間を過ごした高松だった。
一方、着物は、製造の織り手、問屋さん、そして小売りである呉服店までの流れが何十年という年月で固定し確立された世界だ。その中に、「若さ」だけで参入した。
「長い歴史と慣習故に、若い感性と商売の方法が入り込む隙間があると当時は思ったのです」と語る奥山さんだが、実際はいきなりの壁。京都に何百とある問屋さんのほとんどは見向きもしてくれなかったそうだ。ただ、2軒の問屋さんが若い感性にかけてみようと言ってくれた。それから新たな問屋さんとの取引ができるまで10年かかった。
長い歴史と商慣習に新しい風
しかし、奥山さんはこの定説の逆を行った。成人式を迎える19歳の女性をターゲットに振袖を薦めた。この方針が当たった。老舗呉服店が追随するほどだった。
「同じやり方なら若い我々の方に勝機がある。老舗ではなく初代の人間は全てをエネルギーに変えて進む事が出来るのです」という奥山さん。
そして30年・・・・・・。
今では京都の製造元と問屋さん、そして小売店との垣根を取り払い、厳しい業界全体の今と将来について一緒に考える中心的な役割を果たすまでになった。
目標の「地域一番店」について聞いた。
「一番店は信用が第一、信用は何十年も続いて初めて生まれます。まだこれからです」と答えた。
真っ正直な「商い」
実際何代にも渡って受け継がれています。ただ着ることができなければ信頼を失うわけで、こんな正直な商いはありません」と奥山さんは話す。
そして最後に、株式会社桂の、奥山さんの言うこれからの「商い」とは何かを聞いた。
「着物は日常的に買うものではありません。だから、着物を売るという感覚ではなく、お客様に生活の中に取り入れてもらいたい、着物って良いものだと認知してもらうための情報を発信し続ける事です」という答えが返ってきた。
奥山さんは、会合やプライベートでも、どんな場所にも出来るだけ和服で出かけ着物の良さをアピールしている。
艶やかな着物を着る喜びを伝える

奥山 功
株式会社 桂
- 住所
- 香川県高松市松縄町1067-19
- 代表電話番号
- 087-869-2255
- 設立
- 1984年
- 社員数
- 37人
- 事業内容
- 着物小売り、宝石、洋服、健康器具販売及びスタジオ運営
- 沿革
- 1984年 株式会社桂 設立(高松市田町)
1997年 高松市松縄町に本社移転
桂・貴迎館オープン
2004年 トータルフォトスタジオ アリエル オープン
2007年 イオン高松ショッピングセンターに出店
きものサロン桂 小京都オープン
2008年 ゆめタウン丸亀に出店 - 地図
- URL
- http://www.kimono-katsura.co.jp
- 確認日
- 2010.09.02
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