
明治時代から使われる味噌を醸す桶(こが)
生鮮食料品に旬があるように、調味料にも旬があります。例えば先月紹介した「砂糖」は、晩秋に収穫したサトウキビから絞り出した砂糖液を煮詰めて研ぎだすので冬が旬といえますし、夏場の暑い時期に海水を乾燥させる塩は夏が旬といえます。同様に、全ての調味料において製造のための原材料や製造を始められる気象条件がそろう季節が存在し、いわゆる「新物」が出回り始める時期がありました。

白味噌を使った讃岐の郷土料理「ワケギ和え」
今でも讃岐の冬場の郷土料理には、白味噌の旬は色濃く残っています。正月の餡餅雑煮に始まり、チシャもみ(レタスの酢味噌和え)、てっぱい(フナ等の酢味噌和え)、ワケギやナバナ(菜の花)の酢味噌和え、春になるとタケノコの木の芽和え、そして初夏の鰆の味噌漬けと、正月から初夏にかけての郷土料理は白味噌が味のベースになっており、この季節に欠くことの出来ない調味料であることがわかります。
白味噌の仕込みが佳境を迎える12月。昭和初期から続く中屋醸造所のある高松市塩上町には、大豆を煮る香りが立ち込めます。調味料の旬が、味噌の仕込みという古来より続く風物詩として、讃岐の地には今もなお生きています。
現代では日常的に様々な食材が手に入りますが、一つ一つの食材を深く掘り下げていくと、その食材には成り立ちと旬があり、讃岐の食卓は、今もなお旬を大切にしながら構成されていることに気づかされます。
餡餅雑煮 お正月の伝統スイーツ

餡餅雑煮(写真提供:香川県農業経営課)
非常に倹約した食生活の中で、ハレの日だけは贅沢をするという讃岐の食文化の神髄が具現化した料理です。
野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん
- 写真
おすすめ記事
-
2023.01.05
「讃岐の食文化」の素朴な疑問⑩
野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸
-
2022.11.03
「讃岐の食文化」の素朴な疑問⑧
野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸
-
2022.08.04
「讃岐の食文化」の素朴な疑問⑤
野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸
-
2022.04.07
「讃岐の食文化」の素朴な疑問①
野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸
-
2022.03.03
博物図譜に見る讃岐の野菜 ~ダイコン~
野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸
-
2021.09.02
博物図譜に見る讃岐の果実~イチジク~
野菜ソムリエ上級プロ 末原俊幸
-
2019.08.15
日本一食べられている野菜は…
野菜ソムリエ 上級プロ 末原俊幸
-
2017.10.19
讃岐のサワラ
野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸
-
2016.04.21
ソラマメとしょうゆ豆
野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸
-
2018.02.15
味付けご飯の文化
野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸
-
2023.08.03
「讃岐の食文化」の素朴な疑問⑰
野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸