ハレの日の料理である「押し抜き寿司」「カンカン寿司」など、木の枠に酢飯を詰め、具材を美しく並べる箱寿司はとても有名です。しかし、それ以外にも、日常(ケ)の料理として、季節の野菜や豆、芋、魚、麦等のいろいろな食材とお米を炊きあわせる「炊き込みご飯」、あらかじめ味付けした具材とご飯を混ぜ合わせる「まぜご飯」、味付けした具材と酢飯を混ぜる「ばら寿司(ちらし寿司)」、おこわ、お粥とおみいさん(雑炊)など、お米に味をつけた料理の名前が次々と挙がります。そして、これらの料理を実際に作ってみると、入れる具材の量の多さに驚かされます。
2017年を振り返ると、春から夏にかけては高温寡雨、一方で10月以降は低温多雨と、農業生産にとっては大変な年でした。気候が穏やかであると表現される香川県も、近年では、治水・給水のインフラが整備されて、天候の影響を大きく受けることは少なくなりました。しかし、江戸時代の高松藩の記録を見ると、気象との戦いであったことが伺えます。日照りを表す「旱」「大旱魃」、逆に降雨による被害を表す「大水」「洪水」の年がたびたびあり、「五穀実らず」の表現すら少なくありません。
讃岐の食文化の根底には、度重なる気象災害と戦いながら、日常の食材を大切にしてきた倹約の精神が流れ、現代も讃岐に息づく多種多様な「味付けご飯」の文化は、米が嫌いなのではなく、米を徹底的に節約する生活の名残りに他ならないのでしょうね。
豆知識【いりこ飯】
(材料)
米 3合
サトイモ 2個(150g)
ダイコン 100g
ニンジン 1/2本
こんにゃく 1/2枚
いりこ 40g
油揚げ 1/4枚
しょうゆ 大さじ2
塩 小さじ1/2
(作り方)
(1)イリコの頭・腹・骨を取り除き、食べやすいように小さく裂く。
(2)油揚げ、ニンジン、こんにゃく、ダイコンを長さ約2cmの短冊切りにする。
(3)サトイモは半月切りにする。
(4)炊飯器にお米を入れ、調味料と水を 3合の分量まで入れる。
(5)(4)に(1)(2)(3)を加えて、混ぜずに炊く。
野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん
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