「讃岐の食文化」の素朴な疑問①

野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸

column

2022.04.07

マンバ

マンバ

読者の皆様のご反響をいただき、連載9年目も担当させていただくことになりました。これまでの連載の中で、読者の方から、いろいろと素朴な疑問をいただく機会がありましたので、本年度1年間は、それらの疑問にお答えしたいと考えています。

Q.マンバ(ヒャッカ)を食べる文化があるのは香川県だけなのですか?

A.まず、栽培的な視点からは、「マンバ」とは「タカナ」のことで、現在、香川県では「三池タカナ」という全国でも主要なタカナの品種が栽培されているので、栽培自体は珍しいものではありません。また、食材としての視点からも、全国的に見ると、高菜漬け、めはり寿司など、タカナを食する文化は全国に広く分布するので、香川県でのみ食べられているというわけでもありません。
マンバのけんちゃん

マンバのけんちゃん

一方、食文化という視点では、かなり特異なものがあります。まず、全国的にタカナは漬け菜に分類され、漬物として利用されているのですが、香川県では「けんちゃん(おせっか)」のメインの食材に青菜として利用される文化が定着しています。

また、「けんちゃん」は年に1回のみしか食べないような特別な料理ではなく、秋から春にかけてほぼ半年間、かなり頻繁に食卓に上り、かつ、香川県の西から東まで細かいレシピは違えども、茹でたタカナを豆腐やあげと一緒に炒め煮するという同一のコンセプトのレシピが普及しているのは、驚くべきことではないかと思います。実際、いろいろな調理方法を試してみましたが、「けんちゃん」が最も簡単で、毎日食べても食べ飽きない料理だと感じています。
また、マンバは大きくなったタカナの葉を1枚ずつ掻いて束にした荷姿で出荷されます。マンバの季節、卸売市場には出荷されたたくさんのマンバは、香川県のスーパーや八百屋の店頭に配送され、ホウレンソウや小松菜とともに日常的な素材として並びます。商品の嵩の大きさに比べ、価格は日常的な野菜ということでとてもリーズナブルで、家計の助けともなる野菜でもあります。

しかし、香川県内での消費量の多さや認知度の高さに比べると、県外での認知度は低く、県外に出荷されることはほとんどありません。県内のみで消費される香川県の知られざる食文化の代表格の一つと言えましょう。

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん

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