一段と強まる人手不足感

前・日本銀行高松支店長 菱川 功

column

2016.01.07

「短観」という略称で呼ばれることも多い企業短期経済観測調査は、私ども日本銀行が作成している統計の中でも企業関係者に馴染みの深いものと思う。昨年暮れには、回答先企業の皆様のご協力も得て、最新の調査結果を発表したが、最大の特徴点は香川における人手不足感の強まりが明確になったことだった。

具体的には、「雇用人員」についての設問において、「人員が不足」という回答が「人員が過剰」という回答を大幅に上回り、その乖離幅は比較可能なデータのある過去約20年間では最大の水準に達した。香川では2014年秋頃から人手不足感が強かったが、足元にきてそれが一段と顕著になっている。

実際、香川における失業が完全にゼロになった訳ではないものの、企業経営者の方々にお話をうかがうと、経営上の課題として真っ先に求人難をあげる方が少なくない。では、当地の労働市場では何が起きていると考えれば良いのだろうか。

労働市場の分析には、さまざまなアプローチが考えられるが、「仕事を探しているのに働き口が見当たらない人の比率」(失業率)と、「求人を行っているのに働き手が見つからない仕事の比率」(欠員率)の大きさを比較するのも一つの有用な方法なのでご紹介したい。

一般論として、失業率と欠員率がほぼ同水準にある状況は、失業と欠員が共に存在しているものの、全体としてみれば労働需給がおおよそ釣り合っている状態と考えることが出来る。一方、仮に失業率の方が明確に高いのであれば、景気次第では失業率はまだ下がる余地がある状態と考えられる。

データ面での制約もあるため厳密な把握は困難であるものの、政府の労働力調査や職業安定統計などから類推する限り、当地では、このところ失業率が欠員率を明確に下回っている状況が続いている可能性が高い。

これが示唆するところは、労働市場全体の需給環境としてはもはや職探しより人手探しの方が難しくなっており、仕事を探している人の相応の部分は何らかのミスマッチに直面している可能性が高いということであろう。

言い方を換えると、人手確保の実現には、求職者のミスマッチを何らかの形で解消するか、ゼロサムの世界で他社との競合に打ち勝つか、どちらにしても比較的高いハードルを越す必要がありそうだ。少子高齢化に伴う人口減が続く中で、香川の採用事情は大きな曲がり角を迎えている感がある。

前・日本銀行高松支店長 菱川 功

略歴
1966年1月  兵庫県生まれ
1988年3月  国際基督教大学教養学部 卒業
1988年4月  日本銀行 入行
1999年12月 金融市場局調査役
2004年7月  ニューヨーク事務所
2007年7月  金融機構局企画役
2009年7月  大阪支店営業課長
2011年7月  国際局総務課長
2013年6月  国際通貨基金へ出向
2015年6月  高松支店長
写真
前・日本銀行高松支店長 菱川 功

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