外国人の宿泊動向に注目するのには、幾つかの理由がある。まず、アジアを中心にある程度ゆとりある所得層の人口は増え続けているため、国内で人口減が続く中で成長が期待できる貴重なマーケットであることが挙げられる。また、わざわざ海外から観光に訪れる人がいることは、地元(特に若年層)にとっても地域の魅力を再認識する契機となりうるため、定着率向上の面からも好ましいと考えられる。さらに、宿泊客はホテル等の代金だけでなく飲食費用やお土産品の購入額なども日帰り客より大きくなることが知られており、地元にとっての経済的メリットも大きい。
香川県の外国人延べ宿泊者数は、全体としては右肩上がりで増え続けている。数年前には年間3万人余であったものが、一昨年には21万人強に達しており、昨年も(執筆時点での最新データである)1?9月だけで24万人弱と、早くも前年を上回っている。因みに近年の香川県の前年比伸び率は全国を大きく上回っており、特に昨年入り後は全ての月で全国を上回る伸びを記録している。
外国人観光客を継続的に増やすためには、観光資源(コンテンツ)、アクセス、受入態勢が3拍子揃っている必要があるとしばしば言われる。前述のような順調な伸びは、こうした点に係る行政・民間双方の精力的な取り組みが実を結んだものと考えられる。
なお、昨年は特筆すべきコンテンツとして「瀬戸内国際芸術祭2016」があった。近年における月間の外国人宿泊者数のトップ3はいずれも昨年の会期中であったことからもその訴求力の高さがうかがえるし、データ的にみても経済的波及効果が極めて大きいことは明らかであろう。また、来場者に占める「また訪れたい」という人の比率が高いこと、ついでに近隣の観光地を訪問する人も多いこと等、好ましい特性も目立った。
仕事柄、企業関係者との面談、関連データの分析等を行う機会も多いが、香川経済の一層の活性化という観点からは、外国人観光客の誘致は大変有意義かつコスト・パフォーマンスの良い投資という印象を強めている。近年着実に成果を上げつつあるとはいえ、まだ国際的な観光地としての確固たるブランドを確立したとまでは言えないため、今後とも地元が一体となった粘り強い取り組みが続けられることを期待したいし、私共自身も何がしかの貢献ができたらと念じている。
菱川 功|ひしかわ いさお
- 略歴
- 1966年1月 兵庫県生まれ
1988年3月 国際基督教大学教養学部 卒業
1988年4月 日本銀行 入行
1999年12月 金融市場局調査役
2004年7月 ニューヨーク事務所
2007年7月 金融機構局企画役
2009年7月 大阪支店営業課長
2011年7月 国際局総務課長
2013年6月 国際通貨基金へ出向
2015年6月 高松支店長 - 写真
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