リノベーションスクール傍観記

香川県教育委員会 教育長 工代 祐司

column

2016.12.15

「この事業のコンセプトって?何も訴えてこないよ」。「この計画いくらブラッシュアップしても時間の無駄。リセットして考え直した方がいい」。「収支は?まだ考えていない?そんなのビジネスとは言えない」。「だからみんなショッピングセンターに行ってしまうのよ」。「全て相対優位で考えなさい」。「利益を出すことへの執念を必ず持って!」

JR丸亀駅近くの古い空きビルの2階、受講生の事業企画案に対して講師たちから容赦のない指摘が飛ぶ。真剣勝負のやり取りが続く。発表者の声が詰まる。雑用係のボランティアとして参加した私も思わず背筋が伸びる。

11月中旬に2泊3日で開催された「リノベーションスクール@丸亀」の一場面。スクールでは、中心市街地の実在する空き物件を選択し、資金調達や企画・運営に至るビジネスプランを練り上げる。

エリアの価値を高める起爆剤となり得るかも含め徹底的に議論する。事業企画は不動産オーナーに提案し了承されれば実現化に向かう。この点が一般的なビジネス講習会と決定的に異なる。参加者の責任も重い。ほとんど徹夜の三日間となる。

事業企画作成の中心となる受講生は県内外から集まった24名、30歳前後、地域での起業を目指す人やまちづくり活動をしている人など。一方、それを指導する講師陣は7名、平均年齢40歳前後、コミュニティビジネス、ソーシャルビジネスの第一線で活躍している多士済々の顔ぶれだ。

私はこのスクールに是非とも参加したかった。何故か。地域ビジネスの最前線に身を置く講師の方々の独自の発想と情熱を肌で感じたかったこと、退職後のシニア層が彼らの新しい地域活動にどのように呼応できるかその糸口を探りたい、という二点からだった。

彼らは語る。地域への愛情と遊休不動産の徹底した活用により小さくとも質の高いビジネスの構築は可能であり、資金力のない若者も参入できる。その集積とお金の地域内循環の工夫で地域は確実に変わる。暮らしたい街を自分たちでつくることができる時代に入った。

彼らの実践哲学に触れながら、若い世代の台頭はいつの時代も眩しいものなのだろうと思った。

地域づくりにおけるシニアの役割と彼らとのコミットの仕方は未解決だ。若い人たちの熱気の中で、おじさんはおじさんらしい肩の力を抜いたやり方を見つけようと真摯に思う。本当に貴重な学びの機会をいただいた。

香川県教育委員会 教育長 工代 祐司

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