
写真提供:香川県農業経営課
正月に各家々でいただく雑煮は、日本に古くから伝わる日本を代表する食文化です。その成立は古く、室町時代の文献には既に登場しているのですが、各地域の雑煮文化がどのようにして成立したかは定かではありません。全国各地に異なる雑煮文化があることが認識されはじめたのは、江戸時代の参勤交代からとか。その後いろいろな調査が行われてきましたが、全国の雑煮文化の多様性の体系的な調査は1980年代において初めて行われ、餅については、関西は丸餅、関東は角餅という大きな違いがあること、出汁はみそ仕立てかすまし仕立てかとの味付けにも違いがあることが有名になりました。
そして、香川県の「白みその出汁に餡餅を入れる」雑煮文化は全国まれに見るものであることも明らかになりました。白みその使用は、京都や大阪など関西圏のみの文化ですし、餡餅に至っては他県では例がありません。
香川県に住んでいると当たり前の餡餅雑煮も、県外出身者にとってみるとこれまで食べてきた料理からは想像できない衝撃的な組み合わせです。かくいう私も、香川県に来た当時は餡餅雑煮に対する抵抗感があり、数年間食べられませんでした。
しかし、一度食べてみると餡餅の深い甘みと、白みその塩味とうまみの絶妙なバランスの虜になり、その後は餡餅雑煮なしに新春を迎えられなくなっています。
これから年の瀬に差し掛かり、ツイッターなどSNSで「餡餅雑煮」を検索すると、「今年は餡餅雑煮が食べられない」「実家の餡餅雑煮が食べたい」など、香川県を離れて暮らす人たちの餡餅雑煮を食べられないことに対する嘆きがインターネット上に溢れかえります。香川県出身者だけでなく、県外出身者でも一度その味を覚えると、忘れることのできない文化的にも、味覚的にも、そしてインパクト的にも全国に誇るべき食文化なのですね。
全国各地に存在する多様な雑煮は、日本を代表する食文化。香川県に餡餅雑煮という特異な文化があることは、香川県の食が独自に進化してきた象徴であると感じます。
餡餅雑煮

(写真提供:香川県農業経営課)
また、香川県教育委員会や四国学院大学等の調査から、小豆島など島しょ部には餡餅雑煮の文化が無いこと、餡餅よりも成立が古い塩餡餅を使った「塩餡餅雑煮」の文化も香川県に残っていることなど、歴史的にも興味深い料理であると感じます。
野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん
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