四国を鉄道で一日かけてほぼ一周しながら各沿線にある酒蔵の「酒」と、地の連中がその酒を呑む時に昔からアテにしている「つまみ」とを飲み食いしながら、列車の「車窓」を楽しんで四国の原風景に浸ろうという旅情企画です。・・・が、唯一のハードルは、これにまじめに取り組むと一周13時間で日本酒21銘柄3.9リットルを飲まねばならなくなるということでした(笑)。何かの冗談に違いないと四国島内の人たちから相手にされそうになかった切符は、発売直後1時間余で全国各地からの電話応募で完売してしまいました。
車内の壮絶な顛末(笑)は我々の四国なんでも88ホームページでご覧になって下さい。酒マニアや鉄道マニアはごくわずか、参加者様のほとんどは普通の人(どっちかというと普通の人笑)でした。ほぼ立ちっぱなしで酒とつまみと車窓の風景についてガイド役をさせて頂きましたが、いいかげん飲み疲れた(笑)お客様の興味が自然と車窓におちついていく中、めくるめく景色によくも13時間ネタが尽きずに説明できてよかったと思いますが、結果として一番の収穫は、『四国を一周すること自体』がコンテンツになるとはっきり分かったことでした。
そもそも日本をかたちづくっている4島の中で、一日でほぼ一周できるのは四国だけ。鉄道では室戸方面を除いた上で特急を乗り継いで13時間、車なら高速道路と主要国道とを併用し食事とトイレを我慢して一昼夜といったところでしょうか?しかも同じ景色が延々と続く北海道の平原や本州の海岸線と異なり、四国はコンパクトであるがゆえに、「今は山なか、今は浜、今は鉄橋渡るぞと」です。あ、今一度申し上げておきますが私は絶対に「てっちゃん」ではありません(笑)。
長いトンネルを抜けると山間の集落の稲刈り直後の田んぼでゴルフごっこしている小学生、次のトンネルを抜けると太平洋をのぞむ砂浜沿いを自転車で並んで帰る高校生らしきアベック(死語ですか?)、次のトンネルを抜けると川の橋から釣り糸を垂れている近所の暇そうなあんちゃん、一転、古い住宅街の中、おばあちゃんのシミーズがたなびいている物干し台(笑)・・・と、ノーベル文学賞や観光PRのイメージビデオにはとてもとてもなりえませんが、素朴な自然の中で日本人が生活のどこかに忘れてきた風景の回り舞台が体験できます。名所旧跡ばかりでなく、ひょっとすると四国の宝はこの辺りにあるのでは…とも思います。
お休みを一日つぶして「冒険旅行のアラウンド・ザ・ワールド・イン・80デイズ」ではなく「乗りっぱなしのアラウンド・ザ・シコク・イン・ア・デイ」を、同時にリアルな「イッツ・ア・スモールワールド」を、ゆっくりと楽しんでみてはいかがでしょう。
四国なんでも88箇所 巡礼推進協議会会長 佐藤 哲也
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