「神は天にいまし、すべて世はこともなし」

四国なんでも88箇所 巡礼推進協議会会長 佐藤 哲也

column

2024.12.19

人間を60年あまりもやっている自分が、あらためて子どものころの感覚で世間を見ると、こんな短い人の一生の間でも、半世紀前に社会で考えられていた未来の予測をはるかに越えて、世の中が大きく変わっていっていることが身にしみて分かります。日々の出来事でも、衆議院選挙で与野党間のバランスが変化したり、アメリカの大統領が交代したりと、毎日、いろいろな変化が続いております。

ただ、それが自分にとって、また自分の業界や地域にとって良いことなのか悪いことなのか、直接の影響は分析できても、未来の予測はそれこそ「禍福(かふく)は糾(あざな)える縄のごとし」です。今、限定的、確定的に次の世代の社会の姿を過度に決めつけても何の意味もありません。ましてや、今の現実から派生していく無数の未来の可能性の中のほんの一つをとりあげて、過剰に一喜一憂してもいかがなものかと思います。

20年ほど前に、高知の山奥の農家の土間で、地元の人たちと近所のよろず屋で買ってきたつまみで一杯やっていたら、米国のGMが倒産したニュースがテレビで流れました。その中の長老格のおじいさんが「えらいこっちゃ、みんなこれからどうするんや」と、お酒の勢いも手伝って場が騒然となりましたが、最終的には「別にアメリカのGMがどうこうなっても、とりあえず土佐の田舎のおじちゃんの明日の生活はさしあたってなんも困らんやろ」で落ち着きました(笑)。そのおじちゃんはいつも通り徹夜で呑んで、翌朝もいつも通り早起きして元気に野良仕事に行きました。

その昔、よく聞いた例え話に「バタフライ効果」があります。ブラジルの蝶の羽ばたきが、結果的にアメリカで竜巻を巻き起こすというものです。しかし、例えその現象が起こったとしても、蝶自身はそんなことはひとかけらも考えてもいないでしょう。ただ目の前の花の蜜を追い、カマキリ等の外敵から身を守り、懸命に努力しているはずです。

同様に、世界各地の個々の人々が毎日を努力して生きていて、その効果や連鎖の集合が絡み合い、まとまって、世界を、歴史を動かしているのでしょう。そう考えると、社会や世界の動きをきちんと知っておくことは必要ですが、その予想の一つに、「自分の思った通りになる、ならない」「好き、嫌い」の感情を交えて一喜一憂することなく、足下をよく踏みしめて、この変化の渦巻く流れの中で、自分の道を間違えないようにしながら次の世代に渡していくことが、地方に生きる我々の最低限の務めであるように思います。

四国なんでも88箇所 巡礼推進協議会会長 佐藤 哲也

略歴
1960年4月5日 高松市生まれ
1979年 高松高校 卒業
1984年 早稲田大学政治経済学部政治学科 卒業
    株式会社西武百貨店 入社
1986年 株式会社久本酒店 入社
1992年 代表取締役社長 就任
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四国なんでも88箇所 巡礼推進協議会会長 佐藤 哲也

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