直島を訪れる訪日外国人旅行者の実態調査
~瀬戸内国際芸術祭のインバウンドデータを読み解く~

日本政策投資銀行

Research

2023.02.16

調査概要

㈱日本政策投資銀行四国支店は、瀬戸内国際芸術祭(以下「瀬戸芸」という)の中心地であり、現代アートの聖地としても有名な直島を訪れる訪日外国人旅行者の属性や動態を定量的に明らかにするべく、前回の瀬戸芸2019の期間中に直島を訪れた訪日外国人旅行者のビッグデータを取得。その分析結果をもとに、インバウンド施策に向けた提言を、瀬戸芸2022会期中の22年11月に発表した。

旅行者は東アジアが多数も、宿泊比率は欧米豪が高い

直島を訪れる外国人旅行者数では、中国が最も多く、台湾、韓国、香港と東アジア4地域がトップを占める。これらの地域は、2019年当時に高松空港に直行便が就航していたことから、同空港を利用して直島を訪れた人が多いと考えられる。続いて、アメリカ、フランス、オーストラリア、イギリスなど欧米豪が並ぶ。

一方で、直島を訪れた人のうち直島に宿泊した人の割合(=宿泊比率)を試算したところ、上位はオーストラリア、アメリカ、カナダ、イギリスであり、アジアより欧米豪の宿泊比率が総じて高い結果となった。直島を訪れる外国人旅行者の数では東アジアが多い一方で、宿泊する比率は欧米豪が高い。

直島を訪れても四国内の周遊は限定的

直島を訪れた外国人旅行者が、直島の他にどの地域を訪問したのか、周遊の実態を明らかにするため、地域間の相関比率を算出した(相関比率=他訪問先の客数/直島の旅行客数)。

まず東アジアは、高松市83.0%と極めて高く、琴平町や愛媛県、徳島県、高知県との相関もある。高松市を拠点とし、限定的ではあるが四国内を周遊しているといえる。

次に東南アジアは、高松市37.9%と最も高いものの、愛媛県、徳島県、高知県との相関はなく、四国内の周遊はほぼない状況である。大阪や京都など関西圏の比率が高いことから、関西空港を利用して直島へ移動した人が多いと推察される。

最後に欧米豪は、高松市29.6%より、東京、京都、大阪、広島など本州との相関が高い。四国や瀬戸内地域に留まらず、本州を幅広く周遊していることが分かる。

このように、エリアごとに周遊の特徴に違いはあるものの、直島まで来ても四国内をあまり周遊せずに帰ってしまうケースが多い。

瀬戸内海におけるつながりを創出し、面的な拡がりによる周遊を促す

今後、直島を中心に瀬戸芸というチャンスを最大限活かすためには、瀬戸内海における面的な広がりを意識し、広域周遊を促すことがポイントであると考える。

具体的には、①多様な宿泊施設と質の高いサービスの提供、②国地域ごとの戦略による四国における滞在長期化、③クルーズ船を含めた観光客向け航路の柔軟性・利便性の向上、④中国や関西地域との連携強化―などが挙げられる。

高松空港では海外路線が相次いで再開するなど、本格的なインバウンド復活への機運が高まっている。大阪・関西万博と次回の瀬戸芸が同時開催される2025年に向け、地域同士が協力し、これまで以上に広域で取り組むことが求められている。

日本政策投資銀行四国支店 企画調査課 副調査役 藤岡亜希子

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