
高松空港名物「特大讃岐うどん」(模型)を手にする渡部社長=高松市香南町の高松空港
LCCに照準。「勝算はある」

ともに新会社を率いていく小菅光裕常務(右)と=高松空港
「高松空港には潜在能力がまだまだ秘められています」
民営化の担い手を巡っては、新会社を含む3つの陣営が競っていた。決め手となったのは、新会社が示した空港施設への大胆な投資計画と旅客数の目標値だ。

フードコートのイメージ
計画のもう一つの太い柱が路線拡充だ。民営化により、これまで国の基準で決められていた滑走路の着陸料など、航空会社に対する様々な費用を自由に設定できるようになる。新会社では既設路線の増便と、LCC(格安航空会社)の新規路線開拓に照準を絞り、国内LCC拠点の新千歳(北海道)、中部(愛知県)、福岡の他、タイ、シンガポール、北京へと路線網を大幅に拡大する構想を描く。渡部さんは「もちろん簡単なことじゃない。簡単なら既にもっと多くの路線があるはず」と話しながらも、「勝算はある」と自信を見せる。「要は各航空会社が『ここ高松へ飛ばしてみたい』という魅力をきちんと打ち出せるかどうか、それに尽きます」

高松空港の将来イメージ
高松空港の直近の年間利用者数は185万人。新会社では5年後に260万人、15年後に307万人という大きな目標を掲げている。果たして実現は可能なのだろうか。「高松空港へのアクセスが見込める2時間経済圏人口は近県を含めると約500万人なので、決して不可能ではない。人を呼び込むために様々な仕掛けをして、空港と人を繋ぐ起爆剤になる」と渡部さんは力強く語る。
まちは“仕掛け”で変わる
三菱地所が主導する東京・丸の内の再開発や、新宿の複合ビル開発などを手掛け、高松に来る直前までは関西支店長として大阪の再開発事業を束ねていた。
数々のまちづくりに携わる中では、用地買収や地元住民との折衝など苦労もあった。だが、それ以上に学ぶべきことが多かったと振り返る。「その土地土地には地元の風習や、そこに暮らす人たちの思い出など多くの物語がある。歴史や背景をきちんと知ること、それが重要です」
さらに経験から学んだことがある。「まちは仕掛けで変わる」
どのような動線にすれば人はスムーズに動くのか、搭乗アクセスはどうか、商業スペースはどう構えればいいのか・・・・・・。これまで培ったノウハウを空港に結びつけ、「気持ちよく利用してもらえる新しい空港に変えていきたい。とても楽しみで、やりがいのある仕事だと思う」。渡部さんは目を輝かせる。
地元で携われる幸せ
新会社の社長を命じられた時は「関西で進めていた事業もあったので、正直戸惑いました」。だが、「三菱地所としても初めて挑む空港事業に、しかも地元で携われるのはとても幸せなことだ」と覚悟を決めた。
記憶に鮮明な空港がある。20代の頃、海外出張で利用したパリのシャルル・ド・ゴール空港だ。「美しくて迫力があって、こんな空港があるのかと感激したことを覚えています。『見に行きたい』と思える空港の一つです」。もちろん規模は違うが、高松空港を「行ってみたい」と思われる空港にする。それが渡部さんの最初の目標だ。
「高松空港利用者は周辺人口のわずか数パーセントに過ぎません。新幹線やマイカーもいいですが、ぜひ空港を使ってほしい。放っておいて利用者が増えるわけはないので、様々な策をどんどん仕掛けていきたいと思っています」
篠原 正樹
渡部 哲也 | わたなべ てつや
- 1959年 愛媛県今治市生まれ
1978年 丸亀高校普通科 卒業
1983年 東京大学工学部都市工学科 卒業
三菱地所株式会社 入社
2009年 都市開発事業部担当部長
2011年 開発企画部長
2013年 再開発事業部長
2016年 関西支店長
2017年 高松空港株式会社 取締役社長 - 写真
高松空港株式会社 取締役社長 渡部 哲也さん
高松空港株式会社
- 住所
- 高松市香南町岡1312番地7
TEL.087・814・3657(代表) - 設立
- 2017年9月11日
- 株主
- 三菱地所、大成建設、
パシフィックコンサルタンツ、
シンボルタワー開発、香川県、高松市 - 資本金
- 82億7700万円
- 従業員
- 90人(2019年10月1日現在)
- 事業内容
- 高松空港の運営、維持管理、企画、
空港利用者に対するサービス提供 など - 路線
- 国内線:東京(羽田、成田)、沖縄
国際線:ソウル(仁川)、上海(浦東)、台北(桃園)、香港 - 地図
- URL
- http://www.takamatsu-airport.com/
- 確認日
- 2019.09.30
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