発酵技術で、米に新たな価値を

勇心酒造株式会社 常務取締役 徳山 孝仁さん

Interview

2018.02.15

老舗造り酒屋として磨いてきた、米を発酵させる技術。「私たちはその技術をおいしいお酒を造るためだけではなく、ほかの商品づくりにも生かせるんじゃないか、と考えたんです」と徳山孝仁さん(43)は言う。これが「ライスパワーエキス」(注1)を使った化粧品や健康食品づくりのきっかけとなった。

ライスパワーエキスは、米を微生物の力で発酵させる点では酒と同じだ。しかし、日本酒とは発酵に使う微生物の種類、時間や温度といった発酵条件をすべて変え、米の“未知なる可能性”を探っていく。徳山さんは入社後すぐ研究に携わる。

まずは、父である社長の孝さんが研究を進めてきたエキスのうち、まだ効果が確立されていないものを実証実験していった。効果があると分かったら、商品として十分なレベルまで効果を高めるためにはどうしたらいいか研究する。「発酵タンクの中で何が起こっているのか、微生物の複雑な営みは、科学の理屈では説明しきれない。そこが面白いんです」

大好きな研究に没頭する日々は、10年ほどたった頃から「雲行きが怪しくなりました」。商品開発や営業を任されるようになり、化粧品という全く分からない世界について勉強することに。「研究のために化粧品を買いますが、売り場を平気で歩けるようになるまでに何日もかかりました」。戸惑いも多かったが、研究室にいた頃に開発から手掛けた「ライスパワーNo.23」(注2)を、商品開発部門に異動して商品化できた時は、喜びもひとしおだった。
化粧品や健康食品はどれも、肌や体が本来もつ機能を 引き出すように作られている

化粧品や健康食品はどれも、肌や体が本来もつ機能を
引き出すように作られている

ライスパワーエキスを開発する独自の技術を、勇心酒造では「日本型バイオ」と名付けている。遺伝子組み換えなどを行う西洋型のバイオテクノロジーに対し、微生物がもつ力をありのまま生かし米の隠れた可能性を引き出すというものだ。「根本には“生かされている”という東洋的な考え方が会社の理念としてあります」。時に自然を対峙するものとしてみる西洋的な考え方ではなく、自然や家族・・・周りの環境があるから自分が存在できる。

「会社も、地域に必要とされるから存在できる。だから、私たちにしかできない価値を提供して世の中に貢献したい。その一つがライスパワーエキスです」

2017年に新たなエキスが開発された。厚生労働省が示した「医薬部外品」の効果効能のリストにはない「新規効能」として認められた「No.6」(注3)だ。今年中の発売を目指して商品化が進んでおり、大手メーカーも注目している。
左から 「勇心 純米大吟醸 生酒」 720ml 4000円 「勇心 純米吟醸14号」 720ml 2000円 いずれも税別

左から
「勇心 純米大吟醸 生酒」
720ml 4000円
「勇心 純米吟醸14号」
720ml 2000円
いずれも税別

現在、ライスパワーエキスを原料にした化粧品や健康食品のOEMや自社販売が売り上げの99%以上を占め、酒は0.5%に過ぎない。「それでもやっぱり私たちは、酒屋です」。商品が変わっても技術の原点は日本酒の醸造にあると考えているからだ。

「酒屋の使命は、米に付加価値をつけて世に出すこと。日本人の主食である米には、いい効果をもたらす成分がまだあるはず。その可能性を追求していきたいですね」(石川 恭子)

(注1)米から抽出した成分と麹菌、酵母などを組み合わせてつくるエキス。発酵の条件や組み合わせ方によって機能が違い、機能が科学的に証明されたものだけに「No」がつけられる。肌の水分を保つ、胃をいたわる・・・など13種類のエキスがある。
(注2)肌の透明感を高める機能
(注3)皮脂の過剰な分泌を抑える機能

徳山 孝仁 | とくやま たかひと

1974年 綾歌郡宇多津町生まれ
1993年 丸亀高校 卒業
2005年 東京大学大学院 農学生命科学研究科
    博士後期課程 修了
    勇心酒造 入社
2014年 常務取締役

勇心酒造株式会社

住所
綾歌郡綾川町小野2088-1
TEL.087・876・4111
事業概要
清酒製造販売、米醸造発酵製品製造販売、
化粧品製造販売、医薬部外品製造販売
資本金
1000万円
従業員
90人
地図
URL
http://www.yushin-brewer.com/
確認日
2018.02.15

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