“光”で野菜や果物の鮮度を保つ技術

iRフレッシュ 四国総合研究所

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2020.01.16

柑橘選果場への導入事例。赤外光自体は、テレビのリモコンにも使われている安全な光

柑橘選果場への導入事例。赤外光自体は、テレビのリモコンにも使われている安全な光

光は、光合成など植物の生長に欠かせない。植物の生長に有効な光は、波長が400~700ナノメートルの目に見える光(可視光)付近で、それより波長が長い光(赤外光)に植物はあまり反応しないと思われていた。ところが「赤外光の中でも波長が短い『近赤外光』が、鮮度保持に効果があるという発見がこの研究の画期的な点です」と化学バイオ技術部・垣渕和正さんはいう。
照射していないホウレンソウ(上)と、しているもの(下)ではしおれ方が違う

照射していないホウレンソウ(上)と、しているもの(下)ではしおれ方が違う

研究では、鮮度が保たれているかどうかの指標として、「しおれ」などの原因となる水分の蒸散量を測った。最も苦労したのは、光をどれぐらいの強さ、時間で照射すれば効果があるかを導き出すこと。波長ごとに照射強度や時間を変えて最適な数値を導き出し、光を当てた後、水分が蒸散するすきま(気孔)が閉じているかどうかを、葉の表面の型をとって顕微鏡で確認していった。「気が遠くなる作業でしたが、おかげで『光を当てすぎると逆にしおれなど鮮度低下が進む』こともわかりました」と秦(はだ)亜矢子さん。
左が照射していない、右が照射したみかん

左が照射していない、右が照射したみかん

照射強度と時間の関係を数式化し、数式通りに照射すると水分の蒸散を抑えるだけではなく、カビ・腐敗の抑制にも効果ありという結果が出た。「近赤外光が、腐敗をすすめる菌そのものを抑えるわけではありません」。近赤外光が“刺激”となって、植物が「これから暑く、乾燥状態になるかもしれない」と判断して抵抗力を上げるほか、体力の消耗を防ごうとする。その結果、鮮度が長持ちし、色ツヤもよくなるという。
 この技術はすでにパートナー企業で商品化され、柑橘類の選果場などで使われている。「最短0.2秒の照射でいいこと、数式に従って最適条件で照射すれば野菜や果物の大きさに関係なく効果があることが特徴です」。今後は柑橘類だけではなく、カット野菜や輸出用農産品などにも市場を広げたいという。

四国総合研究所

住所
香川県高松市屋島西町2109-8
代表電話番号
087-843-8111
社員数
127人(2019年現在)
事業内容
電機事業に関する調査、研究、開発
化学・バイオ分野等における研究、開発、開発商品の販売
研究開発商品の製造・販売など

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