中小小売業は苦境目立つ

リーマン・ショック後の企業業績調査 東京商工リサーチ

Research

2020.01.16

2008年9月の“リーマン・ショック”から11年が経過した。日本ではリーマン・ショックに加え、東日本大震災、政権交代、超金融緩和、異常気象など、荒波にもまれた11年でもあった。企業業績の推移を検証した。

※東京商工リサーチ(TSR)の保有する国内最大級の企業データベース(約480万社)を活用し、リーマン・ショック前の2007年度(07年4月期~08年3月期)から直近の18年度(18年4月期~19年3月期)まで、12期連続で単体の業績比較が可能な24万2,832社を抽出し、分析した。

中小企業のもたつき 鮮明に

全企業の売上高合計は09年度に84.4まで下落し、その後ずっと100.0を下回る水準だった。ようやく18年度に101.1へ回復し、初めてリーマン・ショック前の水準に戻した。利益合計は上場企業の171.1に対し、非上場は157.6にとどまり、円安を背景にした上場企業の回復と中小企業のもたつきが鮮明に出た。

産業別売上高 運輸業がトップ

産業別の売上高(非上場)は、18年度は10産業のうち、農・林・漁・鉱業、小売業を除く8産業で100.0を回復した。なかでも製造業は17年度まで100.0を下回っていたが、18年度は102.1を確保した。ネット通販の拡大に加え、大手を中心に人手不足で請負単価の引き上げに動いた運輸業は117.7で、全産業中トップとなった。

産業別利益 小売業が苦戦

産業別の利益合計(非上場)は、18年度は10産業中、小売業を除く9産業で100.0を回復した。小売業は08年度以降、売上高、利益ともに100.0に戻らず、構造的な苦境が浮き彫りになっている。18年度の最高は、建設業の457.1。高水準の公共投資に加え、震災復興や東京五輪などの特需が大きく寄与した。

地区別売上高 四国は108.7

地区別の売上高合計(上場・非上場)は、09年度に9地区すべてが100.0を割り込んだ。11年度に北海道、12年度に東北が100.0を回復し、13年度には中国、四国、九州も100.0を超えた。地方ほど公共投資の景気底上げ効果が大きいことを示しているようだ。

リーマン・ショック後の日本企業は回復過程にあるが、建設業や不動産業、運輸業など一部の産業に支えられている面が強い。建設業は東京五輪後のピークアウト、不動産業は資金供給に課題を抱えている。18年度の全企業の売上高合計は101.1と、ようやく長いトンネルを抜け出して100.0を超えた。持続的な成長には、製造業の生産性向上だけでなく内需拡大にどうつなげていくかが問われている。

東京商工リサーチ 四国地区本部長兼高松支社長 立花 正伸

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