都道府県を跨ぐ企業の本社移転は1万3701社
〜2023年度「本社機能移転状況」調査~

東京商工リサーチ

Research

2024.12.19

2年ぶりに増加

コロナ禍を抜け、企業の本社および本社機能の移転の動きが活発化している。2023年度に都道府県を跨ぐ本社・本社機能の移転が判明した企業は1万3701社(前年度比3.3%増)で、2年ぶりに増加に転じた。

サービス業他が最多

産業別では、最多がサービス業他の5254社で、全体の約4割(構成比38.3%)を占めた。次いで、情報通信業が1672社(同12.2%)、小売業が1423社(同10.3%)と続き、上位3産業で全体の6割(同60.9%)を占めた。

この3産業は、小規模の事業者が多く、移転などの意思決定がしやすい。また、脱コロナ禍で、需要が見込めるエリアへ移転した企業が多かったとみられる。

情報通信業は、リモートワークが定着しやすい代表格で、コスト抑制などを目的に都心から地方への移転が加速したとみられる。上位3産業の県別転入超過数(転入数-転出数)トップは、サービス業が神奈川県でプラス42社、情報通信業が長野県と京都府でプラス17社、小売業が群馬県でプラス14社だった。

前年度と比べ、建設業と金融・保険業を除く8産業で移転企業数が増加した。また、卸売業、小売業、情報通信業の3産業では、2年連続で移転企業数が増加した。

地区別転出入状況転入超過1位が中部、2位が九州、転出超過1位は関東

地区別で、企業の転出入状況を分析した。転入超過数のトップは、中部でプラス174社だった。東京から中部各県へ移転する企業が多く、都心から地方への移転の一環とみられる。中部5県のうち、愛知県(マイナス9社)を除く4県が転入超過だった。次いで、熊本県への世界最大の専業半導体ファンドリーTSMCの進出で、関連産業の企業や工場が相次いで進出した九州がプラス116社で続く。大分県(マイナス1社)を除く7県が転入超過だった。

転出超過数では、関東がマイナス272社と圧倒的に多い。関東から地方への転出が続き、3年連続で転出超過となった。ただ、経済活動の再開で都心回帰も見られ、転出超過数は減少している。

損益区分別黒字企業の移転が6割超

本社・本社機能を移転した企業のうち、移転年度から遡って2年以内の最終利益を取得できた企業について、黒字、赤字企業の構成比を算出した。23年度の移転企業では、黒字企業が構成比64.9%(1442社)と6割を超えた。一方、23年度の赤字企業は35.0%(777社)に拡大した。21年度31.9%、22年度34.6%と2年連続で拡大傾向にあり、コスト削減で赤字を補填するため、本社機能の移転が増加した可能性もある。

これまで本社移転は、需要対応やランニングコスト抑制が中心だったが、深刻な人手不足、採用難から従業員の働き方改革や改善を目的とした移転もトレンドに加わってきた。さらに、円安による生産拠点の国内回帰などで、周辺産業や企業を呼び込む大手メーカーの拠点進出が今後も各地で期待されており、企業の戦略に合わせた本社移転はさらに活発になる可能性が高い。

※ 本調査は、東京商工リサーチ(TSR)の保有する企業データベース(約400万社)から、各年3月末時点で都道府県を跨いだ本社および本社機能の移転が判明した企業を集計、分析した。調査は、今回が初めて。

東京商工リサーチ四国地区本部長兼高松支社長 波田 博

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