四国地域における中長期的な物流機能維持のための実態検証~荷主・物流事業者の意識調査を踏まえた施策検討~

株式会社日本政策投資銀行

Research

2025.03.06

調査概要

㈱日本政策投資銀行は、他地域に先駆けて人口減少や高齢化が進む四国地域において今後ドライバー不足が深刻化することを念頭に、2020年より継続して四国の物流の現状と課題に関する調査を実施している。物流を維持できなくなると、地域経済の衰退、生活レベルの低下、さらなる人口流出といった負の連鎖に陥りかねないことから、その持続可能性は四国にとって大変重要であるとの認識のもと、「2024年」という一断面ではなく、より中長期的な視点でトラック輸送を主なスコープとする実態把握及び物流機能維持に向けた調査を行った。

物流事業者の実態と動向

物流事業者に向けたアンケートによると、重要だと思う施策として、ドライバーの雇用や処遇改善などの「リソース確保」より、積載効率改善などの「生産性向上」の方が実現しやすいとの結果が得られた。積載効率改善のためには、行き帰りで荷を確保すること(片荷改善)や、その上でできるだけたくさんの荷を積むこと(積載率改善)が必要であるが、それらの実現のために複数の企業が連携して物流機能・アセットの利用を共同化する共同物流に関しては、実施していない事業者が約半数を占める。事業者間のマッチングの難しさ等を背景に、具体的な共同物流の実現に至っていない事業者が相応数存在することが推察される。

荷主企業の実態と動向

荷主企業に向けたアンケートによると、物流課題に対して荷主企業としても真摯に取り組むべきとの考えが浸透しており、90%以上の企業で物流改善に前向きな回答が得られた。行き便・帰り便のマッチングや異なる荷主の荷物の積み合わせを行う共同物流について、「関心はあるが実現していない」とする回答が多い。共同化に関心がある企業によると、実現しない要因として、「パートナーが見つからない」や「条件面で折り合いが付かない」等が挙がった。なお、共同物流をすでに実施している企業によると、連携パートナーは同業種の荷主企業が多く、事業面で競合しても、物流面では協調する動向がうかがえる。

四国にける持続可能な地域物流の実現に向けて

今次調査では、物流事業者においてドライバー不足は深刻であるものの、2024年問題により即座に輸送能力がひっ迫するとの見方は示されなかった。むしろ、高齢化の進展により2030年前後でモノを運べなくなるリスクが表面化する可能性が指摘されている。

このような状況の中、物流事業者・荷主企業ともに共同物流について関心がある一方で実現しないのは、連携のきっかけをつかむ機会が少ないことが主因である。それを改善するためには、事業者同士が物流課題解決に向けた協議や検討を行う場が必要であり、実際に製造・卸売・小売・物流の各事業者が協働する協議体も各地に多く組成されている。

このように、共同物流や中継地点の共同利用など、物流の生産性向上に取り組む事例は全国に多数あるため、これらの先行事例を参考にしつつ物流課題解決を企図した施策を地道に検討・実行することが物流改善の近道と考える。

そして何より、物流の持続可能性向上には、まずはドライバーの確保・定着のため賃上げが必須であることから、物流事業者の収益源である運賃の引き上げは不可避と考える。最終消費者を含め、各流通段階の需要家が物流コストの価格転嫁について一定程度受容する姿勢が期待される。

株式会社日本政策投資銀行四国支店 企画調査課 副調査役 藤岡 亜希子

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