郷土料理と郷土野菜

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸

column

2016.02.18

高松市中央卸売市場に出荷された セレベスと葉ゴボウ

高松市中央卸売市場に出荷された
セレベスと葉ゴボウ

「マンバのけんちゃん」「餡餅雑煮」「しっぽくうどん」「葉ゴボウの炊いたん」・・・。県外での生活経験があると、香川県の食は県外からでは理解しえない独特のものがあると気づかされます。今回は、讃岐の食文化の独自性を客観視したいと思います。

地域の食文化は、気候風土、農業等と、その土地の条件により、独特のものが作り上げられています。讃岐の食文化も例にたがわず、温暖・寡雨という気象条件と、狭い農地を最大限に活用する独特の農業のもと、独自の食文化が育まれてきました。

讃岐の食の豊かさの要因を端的に表すと「素材の豊富さ」に尽きるでしょう。私も高松市中央卸売市場に勤務して「取扱品目の種類が非常に多い」ことをまず感じました。この感覚を数値化するために、西日本の中央卸売市場の取り扱いを比較してみました。すると、高松市中央卸売市場は、マンバ(高菜)、葉ゴボウ、セレベス(里芋)、ワケギなど、地域性の強い野菜の取扱数量が驚くほど多いことが明らかになりました(別表)。

また、高松市中央卸売市場でのマンバの取扱量は2013年12月で16トンでした。同月のホウレンソウが46トン、小松菜が16トンですので、地域性の強い野菜であるにもかかわらず主要品目と比較しても遜色ならぬ量が取り引きされていることがわかります。

これら素材は、「マンバ」には「マンバのけんちゃん」、「セレベス」には「芋タコ煮」、「ワケギ」には「ワケギ和え」と、私たちの食卓に頻繁に登場する讃岐の郷土料理の素材として核となる野菜たちだったのです。またその料理も、一年中同じものがあるわけでなく、季節ごとに移りゆく食材とともに変わっていきます。季節の郷土野菜と郷土料理が一体となった食文化が、香川県の全域に渡り存在し、今もなお私たちの日常生活に息づいています。

神話の時代から「飯依比古(穀物の豊かなところ)」と表現されてきたように、瀬戸内海と讃岐山脈で隔離された広大で豊かな讃岐平野。瀬戸内海という物流の拠点として、全国の文化が流入してくる中で讃岐の食文化は進化を遂げてきました。そして、江戸時代には生駒氏、松平氏、京極氏のもと、絢爛な食文化が花開き、独特の食文化圏が完成されたのでしょう。それはあたかも「ガラパゴス化した食文化」とも表現出来ます。

マンバのけんちゃん

マンバのけんちゃん

マンバのけんちゃん

香川を代表する野菜と言えば「マンバ(西の方ではヒャッカとも)」が挙げられます。実は「マンバ」とは高菜のことなのです。 マンバを豆腐などと煮る「けんちん煮」がマンバのけんちゃん。手早く作れてとても美味しい郷土料理の代表です。

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん

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