アカデミックとビジネスの狭間

メロディ・インターナショナル CEO 尾形 優子

column

2015.05.06

瀬戸の海はなんとゆったりと水を湛え、私たちは意識することなくせとしるべを通り過ぎ、空では月が満ち星は瞬いている。

私が会社を設立した当初の2002年には四国は4%経済と言われていた。つまり会社を設立してもそもそも市場がないと脅かされた。全国と四国の人口比率の割合と経済比率の割合がほぼ等しいことからその数字を割り出している。次の年に最低資本金制度が変わり、1円でも株式会社が設立できるようになった。ちなみに四国の人口が全国に占める割合は、現在3%と減少している。

今回は宣伝ではないが、少し自社のビジネスついてご紹介したい。ここ数年の間に、私は論文を4〜5本執筆している。まさかビジネス界に入って、論文を書くことになろうとは思わなかった。産婦人科の医療ITというごく限られた分野で、我が社には世界ではじめて実用化し、実績を上げた遠隔医療システムがある。このシステムは、香川大学瀬戸内圏研究センターの原量宏教授との共同研究によるもので、胎児心拍測定器と電子カルテを組み合わせた妊婦さん向けの遠隔医療システムである。

昨今の産婦人科における医師不足という課題を乗り越えるために開発された。我々の顧客である医師や医療従事者の多くは、自らが専門とする分野の学会に所属しているケースが多い。彼らは最先端医療や流行の技術などについて、学会から情報を得ることも少なくない。医療ITの歴史は十数年と浅い。いま徐々に専門医療分野別の各学会にも、医療ITをテーマとするセッションが増えつつある。

一般に医療分野における商品の購買理由には、学会で支持され、大学病院でも実績があるという事由が大きく占めている。医療機器や医療IT製品の多くは、大学と企業との共同研究から生まれるものもあり、学会における学術発表などで注目を浴びるものもある。我々の顧客は、少なからずアカデミックに左右されて商品を購入する。最初からそういう戦略で会社を設立したわけではない。たまたまアカデミックから受け入れられる会社として成長してきた。私たちはアカデミック界から多くの学術的恩恵を享受してきた。

鶴の恩返しではないが、そういったことを感謝し、私たちに希望を与えてくださった先生方に技術でお返しをすることが、私たちのビジネスである。

メロディ・インターナショナル CEO 尾形 優子

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