社会との接点を軸にして「大学の『知』を魅力ある財産に!」

香川大学 産学連携・知的財産センター センター長 永冨太一さん

Interview

2021.02.04

産学官連携とは具体的にどんなことをしているのか。企業が大学に共同研究を頼みたい場合、どうすればいいのか―。

香川大学で研究者と企業をつなぐ役割を果たしているのが、産学連携・知的財産センターだ。前身の組織は2008年に設立し、18年から永冨太一さん(41)がセンター長を務めている。永冨さんがセンターに着任して10年。多くのプロジェクトをコーディネートしてきた。

「素晴らしい研究なのに、情報発信まで手が回らず、世間にあまり知られていないこともあります。サポートがあれば、さらに花開く。チームだからこそできることがあります」
シンガポールでの展示会で

シンガポールでの展示会で

永冨さんは福岡県出身。大分大学で都市計画を学んだ。将来の進路を、都市計画の知識が生かせる行政職か研究職かと悩んでいたとき、「MOT(Management of Technology:技術経営)」の授業を受けた。科学技術を商業化する手法に興味をひかれた。授業を担当していた教授が「産学連携学会」の会長を務めていたこともあり、相談したところ、学会の全国大会に参加する機会を得た。同じころ「知的財産」についても学び、産学連携には欠かせないものだと感じた。そして、この二つを生かせる仕事に就きたいと考えるようになった。

「学会の先生方に相談すると『今はそういう仕事は少ないけれど、今後多く必要とされるようになる』と言われました」。そんな時、香川大学の社会連携・知的財産センター(当時)の求人を見つける。3年間の有期契約だったが、挑戦を決めた。

着任後、まずは学内で行われている研究内容と県内企業や自治体からの要望を収集、約2,000件を把握し、データベース化。その中で、大学の特色を生かせそうな研究テーマをいくつか企画。香川県警察と連携して人口千人当たりの万引き認知件数「全国ワースト1」からの脱却を目指すプロジェクトや、香川大学農学部オリジナル品種のブドウでつくるワインのブランド化研究などを手掛け、3年目に専任教員として採用された。
「起業部」設立時のイベント

「起業部」設立時のイベント

「大学の知を生かし、社会で活躍できる人材を育てることが、大学に求められていることです。企業とのプロジェクトは、座学だけでは学べないことをたくさん経験できます」。永冨さんは学生だけでなく教員にとっても、必要なことだと考えており、できるだけ社会との接点を多く提供したいという。

2019年にはセンターの活動のほかに、「起業部」を設立した。起業したい学生のための活動で、企業との交流を図るほか、学生は具体的な事業計画を練る。既に3人が起業した。「学内にある技術や人材などのシーズをもらさず理解し、社会のニーズもキャッチする。香川大学のことは『永冨に聞けば分かる』というような存在になれたら。香川は世界に誇れるまちです。そういったことも発信していきたい」

鎌田 佳子

永冨 太一|ながとみ たいち

略歴
1979年 福岡県北九州市生まれ
2008年 大分大学大学院博士課程 修了
     香川大学 社会連携・知的財産センター(当時)着任
2018年 産学連携・知的財産センター センター長

香川大学産学連携・知的財産センター

住所
香川県高松市幸町1‐1
代表電話番号
087・832・1672
事業内容
香川大学の産学官連携活動の推進、知的財産の創出・管理など
地図
URL
https://www.kagawa-u.ac.jp/faculty/centers/23894/
確認日
2021.02.04

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