
ソラマメの栽培風景
立夏が過ぎ、高松市中央卸売市場には地場産の、新ゴボウ、エンドウマメ類、ソラマメ、新玉ネギなど、初夏を代表する野菜が今を盛りと並びます。野菜の旬は「春は芽」「夏は実」「秋は種」「冬は根と葉」と、季節に合わせて変化した植物の器官と表すことが出来ますが、初夏に出回る野菜は植物形態学的な分類は出来ません。
香川県では、農家一件当たりの耕地面積が狭く収穫出来る米が少なく、かつ人口密度が高かったため、食料としての米が不足していました。そのため、米以外の食料を活用し空腹を満たすことが考えられてきました。特に、稲作を行っていない秋から初夏にかけての約半年に、水田からいかに収益を上げるかの試行錯誤がなされました。
香川県は「雨が降らない、風が吹かない、雪も降らない、日照量も多い」と一年を通していろいろな作物を栽培出来るという気象条件にも恵まれていました。
香川の先人たちの努力により、麦秋という言葉に代表される「麦作」の普及、そして、新ゴボウ、ソラマメ、玉ネギなどの初夏に収穫出来る野菜の豊富のバリエーションを育んできました。
新ゴボウ、ソラマメ、玉ネギなどの野菜は、稲作という人為的な行為により発生した旬であることがわかります。初夏の時期に、これほど特徴的な野菜が流通するのは香川県ならではだと思います。ここに、「初夏の野菜」という5番目の旬の存在が浮き彫りになり、これこそが讃岐の知恵と苦労が結集された食の特徴ではないでしょうか。
また食材に合わせて、「うどん」「しょうゆ豆」に代表されるような、この季節に大量に収穫出来る素材を有効に活用する食文化も合わせて発達したことは容易に推察が出来ますね。
新ゴボウ、ソラマメ、玉ネギなど「初夏の野菜」は、初夏に一気に収穫され、田植えのシーズンが到来すると、あっという間に姿を消します。5月から6月のわずかな期間しか味わうことの出来ない貴重な初夏の野菜を噛み締めながら、連綿と続く讃岐の食文化に想いを馳せていただけると幸いです。
ソラマメ


野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん
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